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抑制系と逸脱系 ネット社会全体が逸脱を競う状況

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脳の1.抑制系の発達と2.欲動系・報酬系の発達が、並行していないと不都合が起こる。
その論文によれば、性的欲動が発展するころ、仲間の中での承認を得るために情熱的あるいは逸脱的に振る舞うようになり、それは報酬系の発達と見てよい。
その時、同時並行的に脳では抑制系の発達が起こる。社会システムは抑制系の発達を手助けするように仕組まれている。そして抑制系を発達させれば、社会から、大人として認められる。
青年社会の中では他人よりも秀でていることまたは逸脱していることが、仲間内での高い評価に結びつく。
一方で、大人の技術系組織の新入りとしてマイスターのもとで修行する場合、抑制系の発達が大人社会からの高い評価を受ける。
この両者の発達が同時並行的に発生することによって、
個体として性的に成熟し、かつ、集団内個体として大人社会に適応するという2つの課題を達成することになる。
生活するためには、既成の大人社会の序列の一番下にまず並び、そこから徐々に上に行くしかなかった。
徒弟制度はその典型である。
そこでは我慢ができる人間であることを示すことが、受け入れられる条件である。
日本で言えば相撲社会。
同時に、青年仲間社会の中では、表の社会秩序からの適度の逸脱が尊重される。
この2つが同時並行して存在し、その中で、大人社会からの承認、青年社会からの承認、異性からの承認などの課題が達成される。
現代では、欲動系・報酬系の発達はよく促されているが、抑制系の発達については、あまり重視されていないのではないかと思う。
社会全体にそのような傾向であるが、それが顕著に現れているのは、二世三世が跋扈する社会である。
家系のゆえに甘やかされ、抑制系が発達しない。唯一、父親の権威が、抑制系を発達させる要因であるが、母系が強くて、父系が弱い状況では、抑制系が発達しない。
また現実社会から逃避して擬似的社会に生きている場合、脱退が自由なのであるから、抑制系は発達しない。一番の新入りとして下積みから開始するという習慣もない。
そこは未熟な欲望が比較的承認されやすい場所である。抑制的な態度は目立たないものとなりアピールしないものとなり埋もれてゆく。軽躁的なはしゃぎぶりが尊重される。
正確な翻訳は別として、とりあえずは、抑制系と逸脱系と表現しておけばよいのだろうか。ブレーキ系とアクセル系といってもよい。
社会階級の上昇達成と性的達成の両面における、ブレーキとアクセル。
長い間安定したシステムを運営してきたのが人類であるが、最近になってますます、抑制系は消失し、逸脱系が尊重されるようになっている。
逸脱を競うのが青年社会であったが、ネット社会全体が逸脱を競う状況になっている。
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" 中国の諜報機関についての情報はどうなっているのだろう アメリカCIA、イギリスMI6、イスラエルモサド、さらにはロシアKBGというような代表的な諜報機関があるが 中国はどういう組織なのだろう 二重スパイみたいな人たちもいっぱいいそうである "

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中国の諜報機関についての情報はどうなっているのだろう
アメリカCIA、イギリスMI6、イスラエルモサド、さらにはロシアKBGというような代表的な諜報機関があるが
中国はどういう組織なのだろう
二重スパイみたいな人たちもいっぱいいそうである
アメリカが中国・ファーウェイを攻撃しているのも、いままでCIAが自由にできていた情報を横取りされるからだろう
それはテロに対して米を守りたいという愛国者なら当然思うことだと表向きは言うのだが
そうした情報は個人的・集団的利益のために使用されていると予想される
情報局系の人間がのし上がるのも当然である
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" ホームランについて 最近は打者が上半身の筋肉をウェイトトレーニングで鍛えている 球が飛びやすい パ・リーグは簡単に力勝負してくる などの理由でホームランが出やすくなっていると言われている 私が思うには球場に昔のラッキーゾーンみたいなものを作って、スタンドに届かない打球でもホームランと認定しているからおかしな話だ そのホームランの本数を昔の王とか落合のホームラン数と比べても意味がないし、ましてや大谷のアメリカでのホームランと比較するのもおかしい (ここでは、比較がおかしいと言うよりも、大谷の存在

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ホームランについて
最近は打者が上半身の筋肉をウェイトトレーニングで鍛えている
球が飛びやすい
パ・リーグは簡単に力勝負してくる
などの理由でホームランが出やすくなっていると言われている
私が思うには球場に昔のラッキーゾーンみたいなものを作って、スタンドに届かない打球でもホームランと認定しているからおかしな話だ
そのホームランの本数を昔の王とか落合のホームラン数と比べても意味がないし、ましてや大谷のアメリカでのホームランと比較するのもおかしい
(ここでは、比較がおかしいと言うよりも、大谷の存在がそもそも飛び抜けておかしいのだが)
まず、球場を測定して、140メートルくらいの飛距離のものをホームランと認定しようではないか
それより短い打球は認定二塁打で良い
客席の途中に印をつけて、ここを超えたらホームランとわかるようにしておく
そして、本数で表示するのではなく、その時点での全球団の全ホームラン数を合計したものに対しての
その打者の比率を表示すれば良い
たとえば山川はパ・リーグ本塁打王独走中であるが
山川の本数/パ・リーグの全本塁打数*100で%を出す
それと王とか落合とかバレンティンとかを比較する
まあ、記憶の中の王のホームランだって、すごい飛距離が出ていたわけでもないから、どうでもいいようなものだけれども
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“これは日本人だけではないのかもしれないですが、「教えてくれない」「育ててくれない」と何でも他人任せの人がいます。「アホちゃうか」と思うんですけどね。人を育てるとか変えるとかそんなことできないですよ、本人が本気になって変わろうとしない限り。” 岡田武史

“これは日本人だけではないのかもしれないですが、「教えてくれない」「育ててくれない」と何でも他人任せの人がいます。「アホちゃうか」と思うんですけどね。人を育てるとか変えるとかそんなことできないですよ、本人が本気になって変わろうとしない限り。”
岡田武史


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“家族にも誰にも期待を持たないことです。人がこう変わるべきだとか、これをすべきだとか、これをシェアすれば相手は変わるかもとか、期待をしないことです。人間関係だけではなく、人生のあらゆることに期待をしないことです”

“家族にも誰にも期待を持たないことです。人がこう変わるべきだとか、これをすべきだとか、これをシェアすれば相手は変わるかもとか、期待をしないことです。人間関係だけではなく、人生のあらゆることに期待をしないことです”


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" 失敗したカレーと失敗した牛丼を冷凍してあるので それを順番に食べる 苦しいけど 作ったときに感じたよりは美味しいと思った いずれにしても責任食いは辛い 捨ててしまえたらいいのだけれど それができない "

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失敗したカレーと失敗した牛丼を冷凍してあるので

それを順番に食べる


苦しいけど

作ったときに感じたよりは美味しいと思った


いずれにしても責任食いは辛い

捨ててしまえたらいいのだけれど

それができない

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" 人間は誰にしても努力してここまで来たのだ 次はどこまでと いつでも せき立てられているのは いいものではない 周りにいる人は ねぎらってあげよう その人なりに幸せになりたいと願っているのは確かなのだから "

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人間は誰にしても努力してここまで来たのだ
次はどこまでと いつでも せき立てられているのは いいものではない
周りにいる人は ねぎらってあげよう
その人なりに幸せになりたいと願っているのは確かなのだから
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" 人間が何かを選択するとき 表面的な問題の奥にある価値選択を考える いま直面している問題はこれであるが 突き詰めて考えるとどのような価値の対立があり、そのどちらを選択しているのか このような思考が原理的な思考である いつでもそうする必要もないが、時には必要である "

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人間が何かを選択するとき
表面的な問題の奥にある価値選択を考える
いま直面している問題はこれであるが
突き詰めて考えるとどのような価値の対立があり、そのどちらを選択しているのか
このような思考が原理的な思考である
いつでもそうする必要もないが、時には必要である
"


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" 結局、熱くなる人間は損をする "

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結局、熱くなる人間は損をする

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" 現実をいかにして直視するか タイミング、どこまで深く知るか、いずれについても、受け入れにくいことだから いつ、どのようにして、が問題になる さっさと直視できる人は強い人か鈍感な人か いや鈍感な人が強い人なのだろう 凡人には難しいことだ "

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現実をいかにして直視するか


タイミング、どこまで深く知るか、いずれについても、受け入れにくいことだから

いつ、どのようにして、が問題になる


さっさと直視できる人は強い人か鈍感な人か

いや鈍感な人が強い人なのだろう

凡人には難しいことだ


難しいから、酸っぱいブドウとか防衛メカニズムを使用することになる

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神に祈る人間などほとんどいない。 ただ物乞いをしているだけだ。 バーナード・ショー

神に祈る人間などほとんどいない。
ただ物乞いをしているだけだ。
バーナード・ショー


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休職から復職までの流れ

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この図でわかるように
主治医判断ラインは日常生活ができるかどうかであり
会社・産業医判断ラインは仕事が出来るかどうかである

復職準備期については
などが参考となるが
これらの項目についてリワークプログラム(復職準備プログラム)において
慎重に検討した後に復職することが望ましい

主治医は患者の集団内での振る舞いを観察していないことが多いし
産業医でなければ現実の労働現場での振る舞いを知ることはできない
会社は多くは集団内での労働であるから
治療的・保護的な集団場面・労働場面を設定しての慎重な観察が必要である
現状では企業はそのような体制を築いていない場合が多いし、築くことは不可能である場合も多いので
外部機関において適切な設定をして観察する必要がある
そうでなければ、準備不足の会社内での復職準備期における集団場面・労働場面が反治療的・加傷的となる危険がある


復職準備期を企業内で設定するとすれば適切な規模の治療的・保護的な集団場面や労働場面の設定が必要であるが
大企業でない限りはそのような設定は不可能であるので
各種の外部リワークプログラム(復職準備プログラム)を活用すべきである
その中で、疾病知識、ストレス対処法、自己管理能力、不調時のコミニュケーション・スキルなどを学ぶ必要がある。
現状ではすべての企業にこの水準のリワークプログラム機能を義務付けることには無理がある。
担当人材の育成には時間がかかるし、経験のある人材を採用したとしても、その会社の労働の内実に通暁するには時間を要する。さらに職員全般に知識と行動が浸透するまでは時間がかかる。専門部局を構成出来るだけの大企業であれば内部リワークプログラム(復職準備プログラム)も可能であろうがそうでない場合には不可能である。従って外部委託が現実的で合理的な選択である。

ストレス関連疾患の場合にはストレスにどう対処するかの具体的な方法を体得していることが必要であって、そうでなければ、再度傷つくだけである。ストレスで休職に至った場合に、その同じ職場でリワークプログラム(復職準備プログラム)を行うならば、ストレス耐性を構築していない場合には再発の危険が非常に高くなる。ストレス耐性を獲得しストレス対処法を学ぶには元のストレスの現場以外の場所が適している。

これが現在の精神医学の水準であって無視することはできないと思う


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“恋に落ちた直後の段階では、男性のテストステロン濃度は低くなり、反対にオキシトシン濃度が上昇することがわかっている。これは恋人との結びつきをできるだけ早く強固なものにするためだ。男はやさしさにあふれ、物腰がやわらかく穏やかになり、おおらかになる。いっぽう女性は恋人ができたと感じた瞬間から、テストステロン濃度が上がってセックスに積極的になる。そのため男も女も性欲は同じだと誤解されかねない。しかしこの状態はせいぜい3~9カ月ぐらいしか続かず、それ以降は男女の性衝動は「初期設定」に戻る。男は女がセックスに飽きた

“恋に落ちた直後の段階では、男性のテストステロン濃度は低くなり、反対にオキシトシン濃度が上昇することがわかっている。これは恋人との結びつきをできるだけ早く強固なものにするためだ。男はやさしさにあふれ、物腰がやわらかく穏やかになり、おおらかになる。いっぽう女性は恋人ができたと感じた瞬間から、テストステロン濃度が上がってセックスに積極的になる。そのため男も女も性欲は同じだと誤解されかねない。しかしこの状態はせいぜい3~9カ月ぐらいしか続かず、それ以降は男女の性衝動は「初期設定」に戻る。男は女がセックスに飽きたと感じ、女は男がセックス狂いになったと思いこんで、多くの恋はここで終わる。”

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ちまちましたことを気にしても仕方ないだろう

"ちまちましたことを気にしても仕方ないだろう
これから先、100年も生きるわけでもないし
どうせ忘れられるだけなんだし

思いついたいいことをどんどんやってみよう

周りはあれこれいうだろうけれども
最終的に責任をとってくれるわけではないし
困ったらお金をくれるというわけでもないし
最後には自分で処理するしかないわけだから
自分が思うとおりにやるしかないでしょう

結果がいいということだけを
求めているとコントロールしきれない
人間の努力できる部分だけ責任を持てばいい

努力している途中経過が
人間の大事なところだ

また最初の志が大切だ
そこが間違っていなければ、悔いはない
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“風俗で働いてると、 まったく一言もしゃべらない人が結構くる。 二人で無言でシックスナインで舐めあってる。 始めたばかりの頃は、 何か怒らせちゃったのかなあ?て悩んでたけど、 意外とそういう人がリピーターになって指名してくれる。 このまえは部屋にはいってくるなり、 無言で箱をつきだしてきたから、 「なんだろう?」ておもったら、 コージーコーナーのショートケーキだった。 皿とかフォークとかないから二人で無言で手づかみで食べたよ。”

“風俗で働いてると、
まったく一言もしゃべらない人が結構くる。
二人で無言でシックスナインで舐めあってる。
始めたばかりの頃は、
何か怒らせちゃったのかなあ?て悩んでたけど、
意外とそういう人がリピーターになって指名してくれる。
このまえは部屋にはいってくるなり、
無言で箱をつきだしてきたから、
「なんだろう?」ておもったら、
コージーコーナーのショートケーキだった。
皿とかフォークとかないから二人で無言で手づかみで食べたよ。”


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“ただ戦争はよくないって学校で習ったからそうなんだって信じてるだけの人は、学校が戦争して国の為に死ぬのが名誉って教えたらそれ信じちゃう戦時中と同じだよ。”

“ただ戦争はよくないって学校で習ったからそうなんだって信じてるだけの人は、学校が戦争して国の為に死ぬのが名誉って教えたらそれ信じちゃう戦時中と同じだよ。”

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“偏見は無知からではなく、中途半端な知識から生まれる。”

“偏見は無知からではなく、中途半端な知識から生まれる。”

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サイコパス的な性質

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サイコパス(精神病質者)には学ぶべきところがある? 極度に自尊心が強い,話に妙に説得力がある,表面的な魅力がある,非情な性格である,自責の念が欠如している……。このようなサイコパスの属性を並べると,油断できない人物の見本のようだが,こうした特性がほどよく,バランスが取れて発揮されれば,極めて有能で魅力的な人物ができあがる。
 ある心理学実験によれば,サイコパス的な性質を持つグループと,そうでないグループで,税関の検査官のように相手が隠し持っているものがあるかどうかを見抜く能力を比べたところ,サイコパスのグループの方が明らかに能力は上だった。ある有名な外科医の話を聞くと,外科手術はサイコパス的な才能が強みとなることがわかる。
 カリスマ性があり,恐れを知らず,集中力があり,強烈なプレッシャーにも動じずに物事を冷静に進めていく人々。我々がリーダーとして仰ぎ見る政治家やトップビジネスマンは,サイコパス的な性質がうまく現れた人々のことだといえるかもしれない。

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苦味とか臭みが微妙に隠し味になるとか、そんな感じ


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" 出てくる人がいい人ばかりの物語で 泣いてみたい みんながいい人なのにやはり悲しいというように 現実はそうではないが "

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出てくる人がいい人ばかりの物語で

泣いてみたい

みんながいい人なのにやはり悲しいというように

現実はそうではないが

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" 雨の日に降り込められたり、外に出ても下を向いて背中を丸めて歩いたり、そんなことも嫌いではない むしろ心によくなじむ こころが鬱なのに、天気は快晴で新緑は元気旺盛で風も心地よいなんて、 心の風景と外的世界の風景が違いすぎてとても受け入れられないし取り残された感覚になる 雨の日は、自分の心の中と外部世界が一致するのだからやや安心なのだ だから雨が好きだ "

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雨の日に降り込められたり、外に出ても下を向いて背中を丸めて歩いたり、そんなことも嫌いではない

むしろ心によくなじむ


こころが鬱なのに、天気は快晴で新緑は元気旺盛で風も心地よいなんて、

心の風景と外的世界の風景が違いすぎてとても受け入れられないし取り残された感覚になる


雨の日は、自分の心の中と外部世界が一致するのだからやや安心なのだ

だから雨が好きだ

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" 私は一人きりで道を切り開いていこう、改めてそう心に思う、雨の日である "

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私は一人きりで道を切り開いていこう、改めてそう心に思う、雨の日である

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“忘れたいこと思い浮かべながら目を閉じて左右に動かすと忘れられる?とかいう人体の裏ワザみたいなやつ見かけてからやってみてるんだけど割とほんとに忘れられてちょっと怖い。”

“忘れたいこと思い浮かべながら目を閉じて左右に動かすと忘れられる?とかいう人体の裏ワザみたいなやつ見かけてからやってみてるんだけど割とほんとに忘れられてちょっと怖い。”

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ひよこの眼 山田詠美

ひよこの眼

山田詠美

その男子生徒の目を見た時、なぜか懐かしい気持ちに包まれたのだが、それがいったいどのような記憶から端を発してい るのかが、私にはとっさに思い出せなかった。私は、その時、まだ中学三年生だったし、その年齢で懐かしがるべきことな ど、ひとつもないように思えたから、せつない感情が霧のように胸を覆い、心を湿らせた時、私は驚き、そして混乱した。
彼、相沢幹生は、教壇に立ち、澄んだ瞳で、教室を見下ろしていた。私たちは、好奇心にあふれた様子で、その転校生を 見つめて、ひそひそと内緒話を続けていたが、彼は、まったく動じない様子で、担任の教師が自分を紹介するのを聞いてい た。
「……というわけで、相沢は、きみたちと同じ場所で学ぶことになったわけだ。卒業までの短い間だが、どうか仲よくして あげてくれたまえ。じゃ相沢、きみからも何か挨拶があるだろう。」
教師は促すように彼を見た。けれど、彼は、ただ立ち尽くしているだけだった。緊張してしまったのだろうかと、私は顔 を上げて彼の顔を見た。ところがそうではなかった。彼は、落ち着いていた。そして、その澄んだ瞳をまばたきもせずに大 きく見開いて何かを見ているようだった。何を見ていたのかは、まったくわからない。私には、彼が、空気中にある彼自身 にしか見えないものを見つめているように思えた。つまり、彼は、教師のことばなどまったく耳に入れていないのを明らか に周囲にわからせてしまうほどに、うわのそらだったのだ。
教師は、顔を赤らめて、咳払いをした。
「おい、相沢、おい、聞いているのか」
彼は、ふと我に返ったように、怪訝な表情で、教師を見た。
「挨拶ぐらいできんのか、おまえは。」
彼は、小さく肩をすくめて、頭を下げた。私たちは、いっせいに吹き出した。同じ年齢にしては、妙に超然とした雰囲気 が、おかしかった。私たちのほとんどが、担任教師を嫌っていたので、彼のような態度は、私たちの気に入った。教室のい ちばん後ろに用意された席に、彼が歩いて行く時、私たちは、目配せを交わし合った。こうして、幹生は、私たちのクラス の一員になった。
幹生は、自分から、他の生徒と積極的にことばを交わそうとはしなかったが、そのひょうひょうとした様子は、みんなの 気を引くのに十分だった。休み時間になると、何人かの男子生徒が彼のところに行き、彼を質問責めにした。そして、少し 離れた場所で、女子生徒が彼らの会話に耳を傾けた。みんな、季節外れの転校生の秘密を知りたがっていた。けれど、幹生 は、個人的な事情などは、うまいぐあいに、避けてことばを選びながら会話を交わしていたので、私たちは、彼の前の学校 でのことを少しばかり知るだけだった。
「けっこう、すてきだよね、相沢くんて。」
「大人っぽい気がする。」
私と仲のよい女の子たちは、口々に、そんなことをささやいていた。転校生は、いつも見慣れた男子生徒たちより、どう しても格好よく見えるものだ。私はそんなふうに思った。私は、むしろ、彼の瞳に遭遇した時のあの懐かしい感情について 考えていた。初めて出会う人間に対して、なぜ、そんな思いが心をよぎるのかが不思議でならなかった。自分の内のつたな い記憶をたどってみるのだが、解決しなかった。まるで、解けない問題を一つ抱えているような気分になり、私は、自分自 身をもどかしく思った。
その日以来、私は、少しばかりいらだちながら、毎日を送るようになった。私は、授業中、あるいは休み時間、つまり学 校にいる間は、ほとんど一日じゅう幹生を盗み見るようになった。もちろん、転校生の彼は、いつも、生徒たちの注目を集 めていたが、私が彼を見つめるのは好奇心からではなかった。私は、どうしても、心の中のもどかしさを取り去りたかった 。思い出そうとして、思い出せないものを抱えるほど、腹立たしいことはない。私は、時には、歯がみをしたいくらいの気 持ちで、幹生を見つめ続けた。
彼は、いつもうわのそらのように見えた。うわのそらという言い方は正しくないかもしれない。彼の瞳は、いつも真剣に 何かを見つめているようだったから。けれど、その何かは実在するものではないようだった。空気の間に、何か、彼にとっ ての重大なものが浮かんでいるかのように、彼は一点を見つめているのだ。彼は、いったい何を見ているのだろう。私は、 時おり、彼の視線の方向に自分の焦点を合わせて見るのだが、もちろん、私の目には何も映らない。まばたきすらしない彼 の瞳には、いつも、うっすらと涙の膜が張っている。私は、それを見て、首をかしげずにはいられない。彼が、何かに関し て真剣になっているのは確かだと思うのだが。
「ねえ、亜紀、ちょっと聞いてもいい?」
親友の春子が、ある日、言いにくそうに私に尋ねた。
「なあに?」
「あのさ、これ、みんなが言ってるんだけど、あんた、相沢くんのこと好きになったんじゃない?」
私は、驚いて、思わず自分の胸を指さした。
「私が どうして」
「だって、みんな、あんたがいつも相沢くんのこと、ぽおっと見てるって言ってるよ。」
「そんな……。」
私は、困りきった表情を浮かべたまま、なんと言ってよいのかわからずに呆然としていた。私が彼を見つめているのは事 実だが、決して、彼に心を引かれたとか、そういう甘い気分でいるのではないのだ。
「そういうんじゃないよ。でも、そんなふうに見えるの?」
「うん、見える。」
「困ったな。」
私は、その不本意なうわさを消し去るために、彼を見つめるのを当分やめることにした。すると、かえって私のしぐさは ぎこちなくなってしまい、自分でもわかるほどに、冷や汗をかいた。幹生に出会ってから、数週間のうちに、私は、自分が 彼を盗み見るということを習慣にしてしまったことに気がついた。
授業中、幹生が指名されて立ち上がると、クラスじゅうの生徒たちは、いっせいに私を見るようになった。私には、彼ら のこらえている笑いの気配を背中で感じることができた。私は、彼らの思っていることが、まちがいであることを悟らせる ために平静を装おうとするのだが、そうしようとすればするほど、顔は赤く染まり、冷や汗が額に浮いた。私は泣きたい気 分だった。どうして、こんなことになってしまったのだろう。私は、ただ、解けない問題の答えを探るように、幹生を見て いただけだったのに。私は、自分があまりにも無防備であったことに舌打ちをしたい気分だった。受験を控えた生徒たちに とって、恋のうわさは、ちょうど手ごろな気分転換法だったのだ。
それは、秋の学園祭についての話し合いが持たれた放課後のことだった。クラスの中から実行委員を男女各一名選出する ために、クラス委員が候補を募っていた。ある男子生徒が手を挙げて言った。
「相沢と亜紀なんてどう?」
いっせいに拍手が起こった。私は、だれかがその悪い冗談を口にしないように、ずっと下を向いていたのだが、やはり、 逃げようとすればするほど、彼らは私の気持ちを探し当ててしまうのだ。
クラス委員は、少し困ったように言った。
「亜紀はいいけど、相沢くんは転校して来たばかりだし、どうでしょう?」
「でもさ、卒業までに、一個ぐらい思い出を作っといたほうがいいぜ。」
「そう、そう、二人は、息もぴったり合ってるし。」
みんな、げらげらと無責任な様子で笑っていた。どうして、こんなことになってしまったのかと、私は、うつむいて、涙 をこらえていた。何度も言うようだが、私は、ただ、幹生を見て、あの懐かしさの原因を探し出そうとしていただけなのだ 。
その時、幹生が、立ち上がって言った。
「おれ、やるよ。転校して来たばっかでいいんなら、引き受けます。」
「やった」
男子生徒たちは、口笛を吹いたり、拍手をしたりして、私と幹生をはやし立てた。女子生徒たちは、黙ったままの私に同 情して、彼らに反対しようとしていた。
「ちょっと、あんたたちやめなよ。亜紀、かわいそうじゃん。」
「なんで? だって、亜紀が、相沢のこと好きなのみんな、知ってるよ。」
「そうだよ。おれら、手助けしてやってんだぜ。」
「ちょっと、皆さん、静かに。多数決で決めたいと思います。賛成の人、手を挙げて。」
クラス委員のことばに、男子生徒全員が手を挙げた。すると、最初は周囲をうかがっていた女子生徒も手を挙げ始めた。 春子を含めた私と仲のよい数人だけが、憮然とした表情で、机に肘を突いたままだった。
「決まりだね、これで。」
提案した男子生徒がうれしそうにそう言うのと同時に、幹生は立ち上がって言った。
「もういいんでしょ。」
そして、クラス委員があっけにとられる中、鞄を抱えて、私の席に来て、私を見下ろした。
「帰ろう。きみんち吉祥寺でしょ。おれも中央線だから。」
私は、驚きのあまり、彼を見上げているだけだった。幹生が直接、私に話しかけたのは初めてのことだったのだ。しかも 、みんなが見つめている中で。
私は、うなずいて、のろのろと立ち上がって帰り支度を始めた。どうにでもなれという気分だった。どうせ、このまま、 私がすねていたとしても、うわさが消えることなどないのだ。私と幹生は、二人で教室を出た。すげえとか、やるなあとか 、男子生徒たちの感嘆の声が、私たちの背後から追いかけて来た。
私と幹生は、しばらく無言で歩いていた。私は、男子生徒と連れだって歩くことなど初めてで、どぎまぎしていたが、彼 に自分の気持ちを伝えておかなくてはと思い、ようやく口を開いた。
「あの、私、みんなが言うようなこと、思ってないの。どうして、あんなうわさが出たのかわからないけど……。」
幹生は、ちらりと私を横目で見て笑った。
「知ってるよ。でも、きみ、いつも、おれのこと見てたでしょう。」
私は、自分の頬に血がのぼるのを感じた。
「気づいてたの?」
「うん。なんでかなって思ってた。」
私は、ため息をついた。彼は、私が見つめていたことを知っていたのだ。そして、そこには、初恋とか、そのような甘い 気持ちが混じっていないことにも気づいていたのだ。私は、なんだか味方を得たような気分になり、気持ちがらくになるの を感じた。どうやら、彼は、物事を正確に見つめることのできる人のようなのだ。
「実はねえ……。」
私は、初めて彼の瞳に出会った時から、ずっと心の中に棲んでいる疑問について話し始めた。彼は、興味深そうに、私の 話を聞いていたが、首をかしげるばかりだった。
「でも、おれ、東京に引っ越して来たばっかだし、きみと会ったことなんてないはずだよ。」
「うん。それはわかってるんだけど、絶対に見覚えあるのよね、相沢くんの目に。」
「ふうん。ま、いいか。」
そう言ったきり、幹生は、再び黙って歩き続けた。私は、彼が、再び、あの目をしているのに気づいて、慌てた。いった い、どこでこの目に出会ったのだろう。
「相沢くん。」
「えっ?」
彼はふと我に返って私を見た。
「今、何を考えてたの?」
「別に何も。」
「うそ。絶対に何か考えてた。じゃなかったら、何かを見てた。」
「たとえば?」
私は困惑して、首を横に振った。彼は、笑って、私の肩をたたいた。
「みんなが言うこと気にするなよな。たいしたことじゃないよ、あんなうわさ。」
「相沢くんって、大人っぽいよね。なんだか、私たちよりも、ずっと先を行ってるみたい。きみのファン、けっこう多いよ 。女子たちが騒いでるの聞いたことあるもん。」
幹生は、ほんの一瞬、唇をかんだ。
「どうってことないよ。それも、全然たいしたことじゃないよ。」
彼は、そう投げやりに言うと、再び口をつぐんでしまった。彼のその様子は、私などには及びもつかないことを隠し持っ ているように見えた。私は不意に悲しい気持ちになった。彼は、明らかに、私と必要以上に親しくなることを拒否している ように見えて、そのことに私は同情していたのだ。私を含めた些細な事柄に、とても興味を示すことなどできないほどに、 何かに対して心を砕いている彼の身の上を想像し、私はため息をつかずにはいられなかった。私たちの年齢の人間が許容で きる大きさ以上に、何かを背負っている彼は、そういう人に見えた。
その日から、私たちは、つき合っている二人として、クラスじゅうの生徒たちに認められてしまった。私は、言い訳をし なかった。私はみんなが思っているように、幹生とつき合っているわけではなかったが、私が彼に関心を持ったのは確かだ ったし、文化祭の実行委員会のあとで、いつも、二人連れだって帰るのは周知のことになっていたのだ。私は、しだいに、 彼が気を許し始めているのを感じていた。あのうわのそらの様子が、私と一緒にいる時、影を潜めるようになった。彼は、 よく笑った。そして、そんな彼を見て、私も笑った。私は、彼の笑顔が好きだった。それは、あの懐かしい気分を、私に忘 れさせた。彼は、知り合ったばかりの男子生徒として、私の心に入り込んできた。そこには、楽しさ以外に何もなかった。
それでも、私は知っていた。私とことばを交わしていない時、幹生がやはり、まばたきもせずに何かを見つめているのを 。私は、もう、その瞳を懐かしいとは思わなかった。そう思うには、私は、彼に好意を持ちすぎていた。その表情をする時 、彼が決して幸福ではないことを、私は知っていた。彼が、幸福ではないのだと思うことは、私の心を傷つけた。私は、そ の時、すでに、好きな男には、のんきな幸せを授けたいと願うほどに大人になっていた。私は、自分に訪れた初めての恋と いうものを実感していた。それは、今までに一度も味わったことのない感情だった。甘酸っぱいものを思い出した時に頬が くぼむ、あの時の感じに、それはよく似ていた。私は、彼を悲しい場所には置きたくないと思った。彼のことを心配してい るというより、そうなったら、自分自身がやるせないだろうと予想したからだった。私は、自分勝手にそんなことを思い、 そして、そんな自分を許していた。私が楽しい気分になるためには、彼もそうでなくてはならなかった。もちろん、彼には 、そんな自分の気持ちを伝えてはいなかった。親しくことばを交わすようになったとはいえ、彼は、相変わらず、自分の領 域を守り続けていて、そこに、私を入れることはなかった。私は、気のおけない友人として振る舞うしか術を持たなかった 。
「ねえ、相沢くんってさ。ずいぶん、季節外れに転校して来たじゃない? お父さんの仕事の都合とか?」
幹生は、私の質問に、一瞬、不意をつかれたようなうろたえた表情を見せたが、きわめて明るい調子で言った。
「ううん。うちのお父ちゃん、病気で仕事できないもん。だから、おばあちゃんになんとかめんどう見てもらってる。」
「お父さん、悪いの?」
「まあね。借金取りから逃げて来たんだけどさ、もう、逃げる必要もないみたい。」
「……お母さんは?」
「さあ、おれがちっちゃかった時にどっか行っちゃったもん。男と逃げたらしいよ。おれって不幸だろ。」
「そんな……。」
私は、そういう不幸な家庭というものは、小説やテレビのドラマの中にしかないものだと思っていたので慌てた。
「そんな顔するなよ。今のは、全部、うそだよ。冗談。今どき、そんな話、あるわけないだろ。」
幹生は、そう言って、私の背中をたたいて吹き出した。私は、不安な気持ちに包まれたままだったが、彼の手が自分に触 れられているというだけで、気持ちがらくになってしまうのだった。目の前に、好きな人がいるというのは、なんと気分が 落ち着くものなのだろう。とりあえず、彼は、私の目の前で笑っている。それだけでいいのだ。だからこそ、よけいに怖く なる。私の目の届かない所で、彼が、もし、つらい目に会っていたらと考えるだけで、私の心には暗い影がさす。
「亜紀は、おれのこと好きなの?」
突然、幹生は、そんなことを尋ねて、私を慌てさせた。私は、体じゅうの熱が、自分の顔のほうに上がって行くような気 がして、今にも倒れそうだった。
「どうして、そんなこと聞くのよ。」
「そうかなって思ったから。おれのこと、いっつも見てるんだもの。おまえ変なんだよな。おれと、ちゃんと向かい合って 話ししてる時より、おれが、ひとりでぼんやりしてる時のほうが真剣に見つめてるだろ。あれ、どうして?」
私は下を向いて目を固く閉じた。そして、言うべきことを彼に伝えなくてはと震える声で告白した。
「好きだから。心配だから。」
「何が心配なの?」
「わかんない。私と話してる時は、私が相沢くんのこと笑わせてあげられるからいいけど、ひとりの時は、そうじゃないか ら。」
幹生は、困った表情を浮かべて、黙っていた。私は、彼を不愉快にしてしまったのだろうかと不安になり、尋ねた。
「怒った? よけいなお世話だった?」
「まさか。」
彼は、首を横に振った。
「おれも、亜紀のこと、好きだな。」
「ほんと? どうして」
「どうしてって言われても困るけど、亜紀って変なやつだもん。おれの目が懐かしいって言ったりしてさ。今でも、そう思 う?」
「思いたくない。」
「どうして?」
「なんだか怖いから。」
幹生は、私を抱き寄せた。夕暮れだった。公園には、何組かの恋人たちがいたが、私は、自分と幹生がいちばん、せつな いと思った。私たちは、恋を語り合うには幼すぎるのだ。肩を寄せ合うこと以外にどうしてよいのかわからない。お互いに 好きだということしかわからない。
「どんどん日が暮れるの早くなって行くね。」
「うん。でも、空気が冷たくなるほど、夕方の空ってきれいなんだよね。私、寒くなっていくのって嫌いじゃないよ。幹生 は?」
「おれは嫌いだった。なんか寂しいもん。でも、今はいいな。これからも平気かもな。おれ、寒がりだけど、吐く息が白く なっていくってことは、体の中があったかいってことだもんな。」
私は、涙ぐみそうになった。私は、この先、どんなことがあっても、幹生に寂しい思いをさせたくないなあと思うのだっ た。彼の瞳には、相変わらず涙の膜が張っているように見える。けれど、それは、決してうわのそらの涙ではない。私がそ ばにいることが、彼の瞳をぬらしているに違いないのだ。
「文化祭、がんばろうな。」
「うん。最後だもん。終わったら本格的に受験勉強だしね。幹生は、どこ受けるの?」
「ほんとのこと言うと、高校はあきらめてんだ。おれんち、貧乏だからさ。でも、なんか、大丈夫のような気がしてきた。 もしかしたら、なんとかなるかもしれない。働いたって行けるんだし。」
私は、幹生の手に触れた。彼は、私の手を握り、そのまま自分のジャケットのポケットに押し込んだ。私たちは、顔を見 合わせて笑いだした。彼は、すまなそうに言った。
「ちょっと、狭いけど……。」
私は、力を込めて彼の手を握り返した。幸せだった。笑い続けていた。
私が家に帰ると、母は夕食の支度をしながら、だだをこねている妹をなだめていた。私は、いつもより帰りが遅くなった のをとがめられはしないかと心配していたが、それどころではないようだった。
「あ、お姉ちゃん、もう、ママ、困っちゃって。」
「どうしたの?」
妹は、待ってましたとばかりに、私のそばに駆け寄って来た。
「お姉ちゃんからも、ママに頼んでよ。今日ね、新宿のデパートの前で、お店が出てて、うさぎ売ってたの。すっごいかわ いいんだよ。真利子、あれ、絶対欲しい」
私はばかばかしくなって、着替えをすべく二階に上がろうとした。私の心の中は、うさぎどころではなかった。幹生の手 の感触が、甘い毒のように全身に回り、日常的なことが、すべてくだらないように思えていたのだ。
「ねえ、お姉ちゃんからも、言ってよお。二人で、うさぎ飼おうよ。」
妹は、半分泣き声で、訴えていた。母がたまりかねたように大声で、彼女をたしなめた。
「いいかげんにしなさい だいぶ前にも、そうやって、無理やり、お祭りで、ひよこを買って来て死なせちゃったことあったじゃないの。あの時のひよこの顔、覚えてないの 世話もできずに、買って来て。ママは、もう、あんな思いするの嫌よ」
私は思わずふり返って母の顔を見た。
「どうしたの、お姉ちゃん。」
私は何かを言わなくてはと口を開きかけたが、声が出なかった。
「気分でも悪いの?」
私は首を横に振るのが精いっぱいだった。私の心の中に詰まっていたものが、急激に溶けて流れていった。
「ママ、あのひよこ……。」
「そうよ。あなたも覚えてるでしょ。真利子ったら、ほんとうに自分勝手なんだから。あの死ぬ前のかわいそうなことった ら。」
私は、さっきまで握られていた手を、手の平に爪が食い込むほど、握り締めた。それと同時に、私は、あの懐かしい瞳を 思い出した。そうだったのだ。私が、幹生の瞳に出会った時、私の記憶をうずかせたのは、あのひよこの目だったのだ。
あの時、ひよこは、自分の死を予期しているかのように澄んだ瞳を見開いていた。ただ一点を見つめながら、私の手の上 で、静かに、その時を待っていた。私は、その様子を見て、なぜか恐怖を感じたのを覚えている。何もかも映しているよう で、何も見ていない目。ひよこが自分の死期について考えていたとは思えない。けれど、確かに、死は、ひよこをとらえて いた。母や妹は、悲しみで肩を落としていたけれども、私は、ひよこを見守り続けたのだ。まるで、憑かれたように、私は 、その小さな生き物が最後の力を振り絞り、目を見開いているのを見続けていた。ただ不思議だった。諦観ということばを 、そのころ、知るよしもなかったけれども、私は、ひよこの瞳を見つめながら、そのことを思っていたような気がする。
「だって、ひよこは、最初っから、生きる気なんてなかったよ、ママ。うさぎは大丈夫だもん。真利子、絶対に、めんどう 見られるもん。」
私は、妹の声で我に返り、二階に駆け上がった。心臓が激しく鳴っていた。私は、床に腰を下ろし、ひよこの瞳を頭から 消そうと首を振った。すると、今度は、幹生の瞳が、私をとらえて離さなくなった。懐かしいなんてうそだ。私は、最初か ら、彼のあの目に引かれていたのだ。そして、恐ろしさのあまりに、恋をしてしまったのだ。死を見つめている瞳。あの人 は予感しているのだ。でも、私に、いったい、何がしてあげられるのだろう。ひよこは、とうの昔に死んでしまったのだ。
私は、その夜、たくさんの夢を見て、そのたびに、自分の呼び声で目を覚ました。ひよこの目の幻影は、朝まで、私を悩 ませて、私は一晩のうちに、恐怖を知り尽くしたかのように疲れ果てていた。母は、私が、風邪でも引いたのだろうと思い 、大事を取って、学校を休むように言った。私は、たいせつな授業があるからとうそをつき、重い足取りで、家を出た。私 は、恐ろしい予感を抱いていたので、休むわけにはいかなかったのだ。
幹生は、その日から、学校に来なかった。父親が病気を苦に自殺を図り、その道連れにされたのだといううわさが、朝か ら、まことしやかにささやかれていた。けれど、みんな、私を気遣って、騒ぐこともできないのだった。私は、みんなが思 うほど、衝撃を受けていなかった。出会った時から、実は、そのことを知っていたような気すらしていたのだ。
二、三日後に、担任教師の口から、そのことが伝えられた。私たちは黙祷をするように言われて、みんなで目を閉じた。 私だけが、その最中に、こっそりと目を開けていた。私は、この年齢にして、人間の思うとおりにいかないことがあるのを 知ってしまい、すっかり気落ちしていた。彼は、あの公園で、確かに生きようとしていたのに。そして、私の手をきちんと 握ったのに。あの人は、私が初めて出会った、人生に対して礼儀正しい人だったのに。そう思ったら、悔しくて、泣けてき た。だれも、何も言わなかった。私だって、なんと言ってよいのかわからなかった。死ぬなんて憎らしいことだ。私は、た だそう思って泣き続けていた。
それから、何度か、私は偶然、ひよこの目に出会うことがあった。街の雑踏の中で。あるいは、電車の中で。そんな時、 私は、困ってしまうのだった。片手を握り締めながら、私は、こう尋ねてみたい衝動に駆られてしまい、慌てる。もしや、 あなたは、死というものを見つめているのではありませんか、と。
 
 


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" 私は本来事務仕事が結構好きで 空き時間にいろいろとやっている PCで工夫するのも好きだし 印刷をいろいろに工夫するのも好きだ この仕事を最小手順で正確に終わらせるにはどうすればよいか 工夫している と思っていたのだが 最近それが 億劫 "

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私は本来事務仕事が結構好きで
空き時間にいろいろとやっている
PCで工夫するのも好きだし
印刷をいろいろに工夫するのも好きだ
この仕事を最小手順で正確に終わらせるにはどうすればよいか
工夫している
と思っていたのだが
最近それが
億劫
"


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“言論の自由は「誰かを傷つけなければ成り立たないもの」です。言論の自由によって「誰かを傷つける」ことがどこまで許されるかというのが「言論の自由に関する議論」です。”

“言論の自由は「誰かを傷つけなければ成り立たないもの」です。言論の自由によって「誰かを傷つける」ことがどこまで許されるかというのが「言論の自由に関する議論」です。”


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“脳は自分が思っていることでも、一度外に出さないと自覚できない。人に話すことで初めて、「自分はこう思っていたのか」と整理されることがある。”

“脳は自分が思っていることでも、一度外に出さないと自覚できない。人に話すことで初めて、「自分はこう思っていたのか」と整理されることがある。”


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“世界一栄養が無い野菜としてギネスブックに登録” — キュウリ

“世界一栄養が無い野菜としてギネスブックに登録”
— キュウリ


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「見てるとね、学生のアベックの片方が食べ方汚いと片方も汚いのね。ご飯粒ついたままとかね。だからね、おんなじくらいの人同士でないと男と女にならないんだね」 学生食堂勤務

「見てるとね、学生のアベックの片方が食べ方汚いと片方も汚いのね。ご飯粒ついたままとかね。だからね、おんなじくらいの人同士でないと男と女にならないんだね」
学生食堂勤務 


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ならず者国家の個人版

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瀬戸際外交、ならず者国家、などと言われて、

国際的非難を浴びながら核兵器を製造し、大陸間弾道ミサイルを開発し、

経済制裁をやめろ、資金援助しろ、体制維持を保証しろなど要求していると報道されている国がある

その国が実際にどうであるかは報道で知るしかないのでよくわからないが

個人のレベルでも同じような人はいる


みんなで仲良くしましょうというのではなく、

私の要求を聞かないと、みんなが困るようなことをしてしまうよ、それでもいいのか、

といって、周囲の人間を動かして操る


周囲の人間は、強硬策に出ると実際に困ったことをされてしまうので、要求を呑むしかない

それが積み重なるとだんだんどうしようもなくなって

周囲の人間の中に精神的に行き詰る人が出てくる


嫌われても好き勝手したほうがいい

という価値判断はどうして出てくるのだろう

優しい社会に寄生しているようなものだろうか


たしかに自分の利益を最大化できるようでもあるが

皆に嫌われて達成してもあまりうれしくないだろうと思うのだが

どのようなこころのメカニズムになっているのだろう


そのような意味で、心の中の天秤が壊れているような気はする


小さな話では、家庭でのテレビのチャンネル権、食べ物・お菓子の優先権、

お風呂の優先権、ゲームの優先権、気に入らなかったら暴力をふるう権利など


多少我慢して妥協しても、よい子だと思われたいという気持ちを大きくするにはどうすればよいのだろう


自分は人に嫌われても、嫌がられる戦略を続けて、自分の利益を守る人間である、

いい人だと思われるよりも、現実の物質的利益を確保したほうがいいと思う人間である、

そのようなアイデンティティを持つにいたる経過はどのようなものだろう


するとやはり、もともとの資質と、過去の対人関係の中で経験したことが基礎になっているのだろう

その意味で愛着の歴史を振り返ってみたいのだが

簡単ではない

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考えの結論だけを出すのではなく、前提を説明し、途中経過も説明し、かみ砕いて、結論を説明する 急に結論だけ提示して理解してもらえないよりは、少しは良いように思う

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他人なんかどうでもよいという場面もあるものの、

生きていれば他人の同意や賛同を得ることが必要な場面もある


他人から理解してもらえないことが多い、そういう傾向の人もいる

その場合は、考えの結論だけを出すのではなく、前提を説明し、途中経過も説明し、かみ砕いて、結論を説明する

急に結論だけ提示して理解してもらえないよりは、少しは良いように思う

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