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ステミラック注

偉い人が書いている話

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ステミラック注は「脊髄損傷に対する世界初の再生医療等製品」をうたい文句に掲げて、ニプロと札幌医科大学が共同開発した。患者の骨髄液から採取した間葉系幹細胞を培養し、静脈注射をすればそれが遠く離れた脊髄損傷部に移行・集積して神経がつながるという治療法である。少なくとも私の周りの脊椎外科医の間では、その学術的根拠の乏しさや副作用の危険性から、「承認はありえないだろう」との見方が一般的だった。ところが昨年末、PMDAがこの薬を7年間の期限付きで承認し、医療現場に投入してしまった。これに対して本誌説では、再生医療や脊髄損傷の世界の第一人者10人の意見を紹介して、厳しい批判を展開している。
一般メディアの報道によると、ステミラック注の臨床試験を担当した札幌医大の医師たちは「点滴翌日、肘や膝が動きだした。24週目にはスキップもできるようになった」「今までなら100%回復していないと断言できるような患者が回復してきた」「これまでならずっと寝たきりの可能性が高かった人だ」などと、個別の患者に関しての主観的・扇情的な「叙述」を繰り返している。Natureの取材に対して、神戸市の医療イノベーション推進センター長は「科学と医学の革命となる世界初の承認。医療の新時代の幕開け」と豪語している。もはや科学ではない。
Natureは、この治療法のサイエンスとしての基盤、すなわち「静脈注射によって全身投与された間葉系幹細胞が脊髄の再生につながる」という仮説自体を疑問視している。「静脈注射された幹細胞は肺の小血管にトラップされ、損傷された脊髄までは届かない。万一、届いたとしても、損傷部で新たな神経細胞に分化するという科学的エビデンスは否定的である。むしろ肺塞栓の副作用が懸念される」と述べている。これに対して札幌医大の医師たちは「患者自身の細胞であり、拒絶反応や副作用の心配がない」と、論点をすり替えている。無論、わずか13人の試験では副作用の評価など不可能である。
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2015年暮れの「ハートシート」の承認も、Natureに酷評されている
ハートシートとは、日本のテルモが販売する世界初の心不全治療用の再生医療製品である。患者の下肢から採取した筋肉に含まれる骨格筋芽細胞を培養して、シート状に調製し、虚血性心疾患の患者の心臓表面に移植することで重症心不全を治療する。
 しかしこのハートシートでも、わずか7人の患者のケースシリーズ研究(記述的研究)のみで、製造販売が「条件付き承認」とされた。この承認に付けられた条件は、ハートシート治療群60例以上と対照群120例のデータを5年以内に提出して、この製品の有効性を実証することである。
 しかしながら、テルモは昨年、「5年では10人あまりしか患者が集まらない」という試算を出して、3年間の承認期限の延長申請を行い、当局審査部会はこれを了承している。結果、効能の実証されていない治療法が塩漬けされたまま、8年間も臨床の現場で使われという状態が続いている。「将来、早期承認制度によって承認された製品に効果が見られないということが、きっと起こる。そのときはどうなるのだろう」と、Natureは疑問を投げかけている。
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 ステミラック注、ハートシートともに、その薬価は約1,500万円と高額だ。いずれも保険適用が認められているために、本来なら製薬企業が負担して継続すべきだった臨床試験の経費を、患者と国民全体で背負わされていることになる。特に、ステミラック注に関しては、当初は1,000万円以下の薬価算定に対して製薬企業が「製品総原価を下回っている」と不服申し立てを行って1,500万円に吊り上げている。
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スピード審査・承認
「早期承認制度」
国際的には「premature and unfair」
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ミロガバリンがプレガバリンの悪しき前例を踏襲すること、すなわち「末梢性神経障害性疼痛」という曖昧な適応症の拡大解釈によって、効能が実証されていない整形外科疾患に乱用されること
「神経障害性疼痛」の定義・病態・疾患の特定が学術的に不可能であることは、日本ペインクリニック学会がつくった『神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン』を見ると明白である。
プレガバリンやミロガバリンのターゲットであるα2δサブユニットが誘導されるのは、ラットの実験レベルの話で、かつ神経が壊死に至る程度にまで結紮された場合である。ラットにおけるこのように強固な神経絞扼状態に相当するようなヒトの疾患は、帯状疱疹疼痛、糖尿病性疼痛の中でも組織壊死になるような疼痛、脊髄損傷くらいしか存在しない。一方、同じラットでも、ヒトの神経圧迫疾患モデルではα2δサブユニットは誘導されないことが実証されている(Eur J Pain 2018;22: 355-369)。すなわち、α2δリガンドが効くのは、神経が切断、または壊死に至る程度まで絞扼された場合に限られており、脊髄損傷であれば分かるが、整形外科における一般的な神経圧迫疾患に効能があるはずがない。ましてや、腰痛症や関節症の痛みに効くなどは論外である。
プレガバリンもミロガバリンも帯状疱疹性疼痛と糖尿病性疼痛の薬剤
『リリカ』は「神経障害性疼痛」の病名で乱発。医学とは言えない。こんな商売ありですかね。
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5月4日「NHKスペシャル」
「寝たきりからの復活~密着!驚異の再生医療~」
番組では、ほとんどの脊髄損傷は自然に改善していく疾患であるにもかかわらず、あたかも不治の病のように扱われており、臨床現場において患者さんやご家族の混乱を招きかねない。当然、番組の内容にはなんの学術性もない。そもそも学術論文にもなっていない、かつ対照群もないわずか13例の治療群のみの結果で承認された治療法に、学術性を求めること自体が無理である。2人の脊髄損傷患者さんと家族のヒューマンドキュメンタリーにすぎない
専門家の「天動説から地動説に変わった」というコメント
ステミラック注の効能や副作用については、学術的に立証されていない

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