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安保法案、読むことすらできない武藤議員

安保法推進派の本音「自衛隊が血を流さないと・・・」 岸井氏インタビュー

■安倍政権、あえて言えば「戦時体制」の推進

 安倍政権最大の政治課題だった、新安保法制は強行採決で可決・成立した。かねて、同法案に反対していた毎日新聞特別編集委員の岸井成格(しげただ)氏に、法案の評価と今後の見通しをうかがった。

 ―――安倍内閣支持率が上昇しましたが。

 予想された範囲内です。基本的にはメディアの責任が大きい。安保法案について、本当の目的とか、怖さとか、リスクとかがきちんと伝わっていない。NHK、最大部数の読売新聞が新・安保法推進だった。政府・与党は「今や日本の安全保障をめぐる環境は、大きく急速に変わっています」といって、中国や北朝鮮の脅威をほのめかすわけです。そうすると、多くの人が「そうだよな」と思ってしまう。「もはや一国では国を守れない、そういう時代になりました」っていうと、国民は、どんどん「そうだよな」ってなってしまう。ですが、この安保法案をよくみてください。日本の防衛と何も関係ない、っていうところが何も伝わっていない。

 ―――中国脅威論を持ち出して感性に訴えかけたのが、成功したと。

 そういうことだと思う。最初のうちは外交問題にもなるし、中国、北朝鮮脅威論は遠慮していたのですよ。直接、法案とは関係ないしね。だけど、参議院審議になって国民の「説明が足りないとか」反対が過半数を超えているっていう数字が出るようになって、慌てたのです。支持率も急落した。

 それで、繰り返し「日本の国の安全を…」って。何を聞かれても「国の安全と国民の命と財産と平和な暮らしと、これを守るための法律です」ってはぐらかして、繰り返し答弁していた。それで最後に「戦争は抑止される。そのための安全保障です」って、こうゆう言い方を、それを連日国会で聞かされて、NHKもそれをそのまま流す。読売新聞もそうだし。そうなると国民は、そうかなって思っちゃうと思う。中身を理解するのは難しい法案ですしね。

■「派遣」ではなく、「派兵」

―――安保法案が日本の防衛と関係ないということを、改めて説明していただけますか。

 今度の安保法制っていうのは、11本の法律を1本の恒久法と、10本の改正案をひとまとめにして、審議も一括審議という形でやってきました。どちらにしても大きな柱は、従来は、憲法違反ということで行使が容認されなかった「集団的自衛権の行使」これを容認したという。しかもそれは、憲法改正ではなくて、憲法解釈を変えることによって、行使を容認するという、方向に舵を切った訳です。

 集団的自衛権って何かって言ったら、密接な関係にある他国が攻められたとき、自衛隊が出動するってことになるのですよ。密接な関係、これはまずアメリカです。それに準ずるっていう、これは非常に曖昧なのだけど、準同盟国ってことにこれからなってくると思うのです。

 日本の防衛でなく、他国を助けに行くってことなのですよ。集団的自衛権の行使っていうのは。だけども、それでは、なかなか通らないので、そこに条件を付けて歯止めをかけましたよって、その歯止めが「存立危機事態」だという。

 いかにもそれが歯止めのようにして、これも国会審議を通じて、けっきょく「存立危機事態」っていうのはなんだって言われても、結局は分からなかった。総合的判断っていうだけじゃ、どうゆう状況がそうかって、答えられなくなってしまった。専門家に言わせると、「集団的自衛権の行使にあたって、存立危機事態なんてありえない」ってことになっているのです。だから集団的自衛権の行使そのものは、国会審議を通じて破たんをした。

 それともう一つ重要な目的、これがほんとの目的なのですけども。世界中、よく言われる地球の裏側でも、いつでもどこでも、自衛隊を派遣して、アメリカが関わる紛争や戦争に協力をするっていうのですね。

 一応そこに歯止めとして「後方支援」ができるようにという形になっていて、あるいはPKO活動の範囲内でとか、色んな制限は設けていますけど。目的そのものが何かっていったら、いつでもどこでも、地球上どこでも自衛隊を派遣しますよ。そして、アメリカ軍、あるいは同盟国に協力しますよという法律、法体系なのですよ。これすごいことなのですよね。

 これは敢えて申し上げますが、私は防衛省を担当したり、外務省の今回の法案に至るトラウマの背景も取材してきました。(自衛隊を派遣する)PKOで出すときもそうです。イラク出すときもそうです。アフガンのテロ特措法のときもそうです。みんな特措法。特措法でやって、そのとき一番議論になったのは、「派遣」と「派兵」の違いです。「派遣」というのは、あくまで武力行使しない。戦闘地域ではないってことです。

 それを今度はガラッと「派兵」に切り替えた。いつでもどこでも。武力行使できるようにした。これが非常に大きいことですよね。しかも、今は国家と国家の戦争ってものは、ほとんどなくなってきていて、ゲリラとかテロとか、あるいは国家が崩壊する内戦とか。ちょっと想像してみてくださいよって言いたいのですよ。

 結局、アメリカが戦う相手が日本の敵になってしまう。最近のアフガンで「国境なき医師団」の病院が誤爆をされた。もし、あそこに後方支援だって自衛隊が行っていたら、どうするの? 必ず責任取らされますよ。そういう議論を全くしていない。

 集団的自衛権行使の問題と、自衛隊がいつでも出せますよ、出せるだけではなくて武力行使できるようになるのですよ。「派遣」から「派兵」になったのですよ。そうゆう中身をね、一切国会でもきちんと答弁しないし、突っ込まれてもね、話をはぐらかして、直接答えようとしない。

 つまり、今申し上げたような法律の目的がはっきりしちゃうと国民の批判がバァーっと来て、反対が強くなって(法案が)通らなくなっちゃうから、言わなかったのですよ。それで敢えて言えば、先ほどのこの法律っていうものは「国の安全と生命、財産および平和な暮らしを守るためである」と。「戦争を抑止するものである、防止するものである」と。私から言わせれば、完全なウソを突き通している訳ですよ。国民を騙してまで、なんで通そうとしているのかっていうのが最大の問題だと思います。

■日本外交のトラウマ

 ―――この法律は、「お祖父さん、岸信介氏の見果てぬ夢を果たす」という安倍さんの個人的な願望が、強く出ているのでしょうか?それとも、米国から、要請されていたという要素が強いのでしょうか?

 私は、両方だと思いますね。安倍さんが一番やりたいのが「戦後レジームからの脱却」なのですよ。これは三本柱があって、一つは「憲法改正」。二つ目が「対等な日米同盟」。この対等っていう中身が問題なのだけど。そして三つめが「自虐史観に支配される教育改革」という。これを同時進行でやってきているのですよ。これが、ある意味でおじいちゃんの、岸信介さんのやろうとしたこと。非常に強い決意で臨んだのだけど、道半ばにて倒れた。その時期がいま、巡りまわって孫の自分に来たっていう気持ちが非常に強い。

 それから、もう一つが、湾岸戦争のトラウマ。あの時、自衛隊の派遣を何度も要請されたのだけれども、結局出さないで、お金だけ出した。感謝をされなかった。そしてトラウマの最たるものは、歴代の首相によく聞かされたことだけど、アメリカの国防総省があれ以来、二言目には「日本って国は、そこまで恥ずべき臆病者か?」って言われた。「日本には外交ってあるのか?」とある筋から言われ続けた訳ですよ。これが彼らのトラウマなのですよ。本当にトラウマ。

 それに対して、ジャーナリズムの立場から言うと、当時それを止めた後藤田正晴さんが正しい。彼の「アリの一穴論」。絶対ダメだって。外務省も「これをやらなければ、日米同盟もおかしくなりますよ。孤立しますよ」って、説得に後藤田さんのところに行くわけですよ。そうすると後藤田さんが「ふざけんな。やるならやってみろ」と「俺を倒していけ」って「俺は体張ってでも止める」って。「これはアリの一穴なんだ。これを認めたら憲法なんて、9条なんてないのとおんなじだ!どんどん、どんどん戦争する国になってしまう。そこまで分かっているのかお前ら!」って。

 それで最後は出さないって決断するのですよ。この争いが、ずーっと。で、アフガンのときに、敢えて名前を挙げちゃえば、アーミテージですね。国防総省、日米安保のドンとか、ハンドラーってね、異名を持っているのだけども。

 彼が最初に言ったのが「Show the flag」。とにかく、日本旗「日の丸」だけでも立ててくれよと。紛争地、アメリカが戦っているところで。それで次がイラク戦争。「Boots on the ground」って。それでこないだ「News23」で彼とインタビューやりましたけど。何と言ったかというと、「長年憲法9条がバリケードのように立ちはだかって、日米軍事の協力ができなかった」と。「今度、それがなくなるのだ」と。

 バリケードが取り払われると。それで、敢えて言うと、「Show the flag」、「Boots on the ground」次は、「Sheds the blood」、「血を流せ」って日本も少しは。ついに、ここへ来たってところですよね。でもね、「Sheds the blood」って大変なことなのですよ。

 でも、トラウマからするとそうしなきゃダメだって。これを私がなんでここまで強く言えるかっていうとね。新法案を推進してきた自民党や政府の幹部、外務省の高官やOBとかみんな取材しているのだから。彼らの本音ベースの発言なんかも、取材して取っている。彼らはっきり言うのですよ、「自衛隊が血を流せないで、どうしてこれから日米同盟が成り立つのですか」って。そうゆう発想が根底にあるわけだよ。見捨てられ論ですよ。

■ちらつくCIAの影

 ―――そういう意味では、この法案は外務省主導の法案で、防衛省、自衛隊は消極的でしたよね。

 外務省主導だけではないのですよ。今度の安保法制に、アメリカのCIA(中央情報局)とかあるいは、イスラエルのモサド(イスラエル諜報特務庁)とか、いろんな情報機関の、いろんな影がちらつくのだよね。これはね、安倍内閣が続けてきて、私が非常に危険な道に入ってきたなと思うのが、まず「特定秘密保護法」ですよ。で、それに絡んでどんどん、どんどんやっていくでしょう?刑法改正とか、個人情報保護法とか。それと、スパイってものをどうするかとか。勘ぐればマイナンバーとか、防犯カメラとか、みんな疑いたくなるくらい。要するに、個人を国家が徹底的に掴む、掴んでいくっていうね。

 そこで今度は、武器輸出でしょ。武器の輸出及び、共同開発。これを解禁しちゃったわけですよ。それで、「防衛装備庁」ってものを作って。まさにこれは、「武器」って言葉を「防衛装備」って変えたわけだよね。その武器の輸出入、調達をするのを「防衛装備庁」って名づけたのだよね。でこれを、財界がものすごく応援してしまった。

 「特定秘密保護法」、「武器輸出」、「安保法制」どうも一体なのだね。根底にあるのは、ある種、日本の右の人達の考える「日本人ダメ論」だよね。「平和ボケ論」だよね。だから、いざってときに、アメリカとともに戦える国になろうと。

 敢えて言うとね「戦時体制」なんだね。戦時体制づくりですよ。自衛隊が外に出てって、死ぬかもしれない。ある種の、これも岸信介氏の夢。総動員って大好きだった。

 岸さんとは、ロングインタビューやって、けっきょく本にできなかったのだけどね。色々と、トラブルがあってね。彼(岸信介)は本当に、満州事変からの思いがあってね。統制経済のまさに、軍事経済を作った訳ですよね。だから、日本人の平和ボケっていう批判はまだいいのだけど、現にいよいよ自衛隊員が戦死するかもしれないという。そうゆう際どい法律ができちゃった訳ですからね。

 そうすると国民の意識の中に、そうゆう戦争ってものを、身近に感じさせられる。「平和じゃないよ、世の中は」っていうね。そのために国家体制をどうするか。国民の情報をどのように抑えていくかって、そこに大分踏み込んだ。この内閣は。

■安保法案、読むことすらできない武藤議員

 内閣支持率が上がった安倍政権だが、来年夏の参院選に向けて懸案も多い。今後の政局運営はどうなるのか。毎日新聞特別編集委員の岸井成格氏に聞いた。  

 ―――次の参院選が焦点でしょうか。

 ちょっと、先が読めない以上に閉塞感があります。ただ、官邸、自民党幹部はものすごく参議院選挙を恐れています。理由は、二つ。安保法案のときの、あの反対運動。あと、環太平洋経済連携協定(TPP)。TPPも聖域を守ったと言われているけれど、即撤廃を守っただけですよ。農協(JA)も改革されてしまって、弱体化されてしまっているというのがあるけども、やっぱり、農業関係というのは、自民党の硬い支持層ですからね。この安保法制と、TPPは参議院選挙に良くも悪くも非常にボディーブローで効いてくる。

 それで地方の声を聴いていると、自民党の地方組織がみんな消極的でダメなのだと。それから、公明党の支持母体である創価学会が、離れている。学会が投票に行かないと、いまや自民党議員も当選できない。今、公明党と創価学会をどうするかっていうのが、参議院選の最大のテーマなのですよ。一番は、軽減税率で、税調会長を変えた。

■党内議論のない自民党なんて

 ―――自民党内はどうなのでしょうか。

 たとえば、二階総務会長。「いくらなんでも、安保法制にしても、TPPにしても党内議論をしなかったのは、なんでだ!」と怒っているという。党内論議のない自民党なんて、ありえないのだから。政調会をずーっと上がってきて、総務会で全会一致、これもね「和」の政治だけど。そこで決めるのは、総務会長でしょ。

 ところが、いつも突然結論が来て、TPPも安保法制も、日米ガイドラインに至ってもそうだし。与党協議も、一部の人間だけでやっているのだから。高村副総裁と北側公明党副代表。あとは、役所の人間。ほとんどの自民党議員は、議論に参加しないのだから。

 衆議院の特別委員会の委員で、スキャンダル離党した武藤議員。取材したときに、法案を読んですらいないのですよ。この劣化ぶり。法案を審議している、特別委員会の委員がです。

 なぜ、読まないのかって聞いたら、読んでも分かるわけがないって言ったそうです。開き直りもいいところで、凄まじい劣化ぶりですよ。この問題は、武藤議員だけの突出した問題じゃないと思いますよ。議論されていないのですよ、党内でちゃんと。それこそ読んだって分からないのですよ。

 「〇〇事態」とか言っても。選挙区で奥さんたちが困っているのですよ。みんな選挙区に旦那が帰らないから、奥さんが毎日「〇〇事態、〇〇事態ってなんのことですか」って聞かれるのですよ。奥さんは、答えられない。それで、「旦那が帰ってきたときに、聞いてください」っていうのだけど、旦那も答えられない。笑い話もいいところだけど、笑えないですよ。それを強引に通しちゃったわけだ。

■自衛隊さん、肩代わりしてよ

 ―――これから安保法制に関する、自衛隊の行動規範などのルール作りが進められていくと思いますが。

 私の知っている自衛隊OBを含めてみんな気にしているのは、敵と戦って、しかもお国の敵じゃない敵と戦って、殺す、殺されるなんて教育と訓練やったことないから、だからまずその教育を始めないといけない。家族だってたまんないよ、自衛という、お国のためじゃないのだから。敢えて言えば世界平和のためなのだから。

 ゲリラか、市民かもわからない相手を。あるいは、政府と反政府が戦っている今のシリアでアメリカ側についたら、反政府軍につくわけですよ。後方支援であれ、なんであれ。これはっきり言っていたからね、政府・自民党の担当者は、今度法律ができれば、少なくとも法的には直ちに自衛隊が出せますよって言っていた。

 派遣の基準が何も決まっていない。PKOの派遣でさえ大変だったのに。非戦闘地域っていう。それで、小泉首相の有名な迷?文句があるわけでしょ。「自衛隊のいるところが、非戦闘地域です」っていう。

 もうひとつは誰の判断で銃の引き金を引くか。そうした判断を全部現地で行う。現地司令官の判断ですよ。いちいち問い合わせてられないもの。

 あのイラクの非戦闘地域であっても、迫撃砲が飛んできて、宿営地の近くに着弾。それで今年までに、現役の自衛官が54人自殺しているのですよ。イラクから帰ってきた現役の自衛官が。そのくらい精神的にも辛いものがあるのだよな。非戦闘地域でです。

 忘れちゃいけないのは、アメリカが相対的に力を落としてきていて、ご存じの通りオバマは、「世界の警察官」なんて時代は終わったという。アフガン、イラクからできるだけ早く撤退したいと思っている。国防費も削減、兵力も削減。今、沖縄にもいる海兵隊も再編の真只中にあるわけですよ。だから、アミテージなんかが言うように、自衛隊さん助けてくれよって、本音で言うとね。少なくとも、肩代わりしてほしいのだよ。アメリカの警察官っていう役割の一部を。

 そこへ安倍さんが手を挙げた。よし、アメリカを助けてやろうって。恩を売ってやろうって。これは、自民党の推進派の高村副総裁がはっきり言っている。その裏には、見捨てられ論というのがある。このままいくと、アメリカはどんどん力を落とすことになる。いざとなった時に、日米同盟があるけど、助けてくれるかどうか分からない。今のうちに恩を売らなきゃ、日本が血を流さなきゃ、彼らも血を流さないのだって。この論理が根底にある。

 危険だって、この発想自体が。日本の防衛は、日米同盟があって、アメリカがやることになっているのだもの。周辺事態法もあったのだから。「個別的自衛権」と「日米安全保障条約」と「周辺事態法」で、日本の防衛と東アジアの対応は、十分にできるわけ。問題は、グレーゾーンって言われる海上保安庁と、自衛隊の役割分担とかね。「集団的自衛権」や「派兵」の安保法案が必要なことではないです。

 ―――攻めてこられないように、そんなことが起こらないようにするのが重要でしょう。抑止力があるから、万全というわけではないでしょう。

 米国も、もうそんな力ないからね。だから、安倍首相は支持層がそうゆう人たちだからね。どうしても、中国嫌い、韓国、北朝鮮嫌い、ロシア嫌いが多いからね。だから、安倍さんの頭の中にも、包囲網をつくってけん制して、追いつめていくっていうね。だから、地球儀俯瞰外交とか言っているわけですね。しかし、抑止力論は必ず軍事力拡大につながる危険がある。

■準同盟国はオーストラリアとフィリピン

 ―――今度のTPPも中国封じ込めの一環ですね。ただ、封じ込めって疑心暗鬼が強まってしまう。パイプがない中やると、軍拡が進んでしまう。

 日本防衛と関係がないところで、安保法制作ってしまったら、また刺激するだけです。今、目先は南シナ海だけど、オーストラリアとフィリピンが(日本の)準同盟国になるかって話で、あとシリアの有志連合的に言うと、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドで、フィリピンがどう要請に応えるかって話で、近く中国が南シナ海に軍事拠点を作っているところへ、米軍が入って行く。中国がどう反応するか見るために。

 その辺からだよ。きっと、自衛隊に出動要請が必ず来る。それで、安保法制ができるので、これも聞いていると思うのだけど、フィリピンの大統領がこの間来た時に、これからフィリピンの元米軍基地を、日本の自衛隊に自由に使ってもらうって言っていた。

■暴走し始めた権力を止めるのがジャーナリズム

 毎日新聞特別編集委員の岸井成格氏に、安倍政権のメディア対応やそうした動きへのメディア側の抵抗力に関して聞いた。

 ―――日本のメディアの対応ぶりをどう見ますか。

 ジャーナリズムが一番、心しておかないといけないことは何かっていうと、権力は必ず腐敗する。そして、時に暴走する。その暴走をいかにして、未然に防ぐかっていうのがジャーナリズムの役割であり、本来なら国会であり、司法の役割だけど、ジャーナリズムの大きな役割でもあります。
その暴走が始まったのですから。その暴走をいかに止めるか、それが一番大事なところなのですよ。ところが今の政府は、本当によくメディア対策を検討し、堅実に積み上げてきているのだね。

一番大きいのは、分断だね。中堅・若手の「文化と芸術を語る会」の沖縄2紙を潰せっていうのと、広告を外せばメディアは成り立たないのだっていうね。作家の百田さんを呼んで、ああゆう暴言が飛び交ったけど。ああゆうことを平気で言える。あの会は総理の側近グループですからね。空気が出ていますよね。

あえて、聞かれて出てきた議員が「本当に潰さなくてはいけないのは、沖縄2紙だけじゃなくて朝日、毎日、中日・東京だ」って。3紙を挙げたわけだ。総理の権力についての考え方は、権力は行使するためにある。その際たるものが人事権だって。日銀総裁から始まって内閣法制局長官、そしてNHKの経営委員、会長とやって、人事局まで作ってしまった。官僚も官邸を見ざるをえなくなっちゃった。OBもみんな心配しているよ。それこそみんなヒラメだよ。局長以上みんなに目を光らしているから。そして彼らの一番イヤなとこがね。スキャンダル見つけて脅し、すかしやる。これも組織操縦の一端だね。

―――そんなこともやっているのですか?

酒癖が悪いとか、女癖が悪いとか借金をしているとか。弱みを握られると、人間弱いからね。

■番組収録中にも右翼の抗議電話

――岸井さんも、ネット右翼のようなところから、個人攻撃されることはあるのではないですか?

あるある。でも、スタッフは言ってこないのだよね。聞くに堪えない、言うに耐えないことだからって言っている。毎日のように番組収録中にかかってくると聞いている。テレビ局も新聞社も時に、それが面倒になってくるのだなって。しつこい相手に対して組織は弱いからね。

―――そのがんばっている姿は、じわぁって他の社員に伝わって、結局は読者の信頼になりますからね。あの新聞社は、頑張るんだって。

 こうなってくると改めて、論説委員長とか主筆をやっている時にも一貫して「中庸リベラル」っていう路線をね。社風、社説としてね。この考えを、今の社員も噛み締めつつあるのではないかなって。

 戦後70年談話のときに、まだ30歳になってない社員だったけど、「戦後って聞くと、おじいちゃん、おばあちゃんの世代のことって思っちゃうのですよ」戦後って聞くだけで、自分たちと関係ないって。「戦後だよ。私、戦後70年の中で生きてきたのに」戦後って聞くと、関係ないって。驚いた。世代によって、そうゆうギャップもあるのだなって。自分たちと全然違う世界。世代の違いなのかと思って、何も言えなかったのだけど。

―――青年局長の処分が前倒しで3ヶ月で解かれたのは。

 これも一貫して、東京五輪の競技場やエンブレムで下村大臣への責任論があったときに、総理は内閣改造もあるから、うやむやな形にしてしまったのですよね。それで、総裁特別補佐にしたりしている。ある種の仲間内の温情主義が非常に強いという。青年局長についても議論があったのだけどね。更迭すると、あのときの議論が間違っていたことになり、認めることになってしまうから。非常に抵抗があったんですよ、あのグループから。そのほとぼりが、冷めたってことじゃないかな。一番典型的なのは、磯崎総理補佐官のケースだ。「法的安定性は関係ない」と立憲主義に反する発言をして陳謝したけど、頑として代えなかった。

■新閣僚に「口にチャックを」

 ――新しい内閣はどうですか。

口にチャックをしろと、菅官房長官が繰り返しているらしい。もう絶対に個人の意見は、言わないようにと閣僚全体に。役人が官邸に歯向かったら最後、徹底的に干しますよね。安倍内閣は、それで持っているところがありますよね。

安倍さんが総理に返り咲いて、すぐに呼ばれて話しをする機会があった。なぜかって言うと、安倍首相のお父さん(安倍晋太郎)の担当をやった。毎日新聞の先輩でもあった。晋太郎さんは、いつも岸信介さんの安保闘争がらみで、「俺は、岸の娘婿じゃないからな。安倍寛の息子だからな」って。安倍寛は、反東条で、非翼賛を主導した5人の中の1人だから。筋金入りの反戦でした。安倍晋太郎さんは、父親に歯向かって特攻隊に志願したのですよ。それで、敗戦。非常に反省をして、新聞記者になった。そういう変遷がある。だから、晋太郎さんは、徹底した反戦、平和主義だった。記者を前に、晋三さんに伝わることを前提にそう言っていた。

しかし、安倍官邸は、本当は危機感を感じているのではないかな。周りはおだてているけど、安保にしても、アベノミクスにしても、TPPもこれだけ反対論、懐疑論が広がっていますし、参院選への影響は大きいとみて警戒していますよ。成功しているとは思ってないのではないかなと思います。


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