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本当のことを知るのは幸せとは限らないわけで その辺りが難しい

本当のことを知るのは幸せとは限らないわけで
その辺りが難しい

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ベルトコンベアに乗ってきて次々に消えてゆくイメージ そういえばさっきのあれが、と思った時にはすでに手遅れで もう見つからない

情報量は増えている
通り過ぎる情報について
あとで確認しようと思っても
探せないこともある
どこかにあることは確実だとしても
探すことは難しい

ベルトコンベアに乗ってきて次々に消えてゆくイメージ
そういえばさっきのあれが、と思った時にはすでに手遅れで
もう見つからない

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スクリュー型プロペラ人工心臓

WIRED.jp - 「拍動しない人工心臓」で生きた人

55歳のクレイグ・ルイス氏は、心臓の拍動が止まったまま1カ月間生き続けた。胸で心臓の音を聞くと無音だった。心電図に接続すると、見慣れたリズムはなく、フラットな線が現れた。

ルイス氏の心臓は、1対の無拍動流ポンプに置き換えられていたのだ。このポンプは、スクリュー型のプロペラを使用して、拍動なしに一定量の血流を送り続けるものだ。

ルイス氏を担当したテキサス心臓研究所(Texas Heart Institute)のビリー・コーン医師とバッド・フレイジャー医師は、このポンプに、既存の植え込み型の補助人工心臓と「いくつかの手作りの機器」を組み合わせた。

コーン医師は、公共ラジオ局NPRの記事の中で、心臓の拍動は、現行の心臓のメカニズムにおいて必要なだけだと語っている。本人の心臓の代わりに無拍動流の人工心臓システムを使用しても、「ほかの臓器にとってはそれほど問題がないようだ」と同医師は言う。

残念ながらルイス氏は、移植後1カ月をすぎたころに、もともとの病気[アミロイド症]が理由で亡くなってしまった。だが現在ももう1基、無拍動流の人工心臓が、子ウシのアビゲイルの体内で稼働中だ。コーン医師らによる人工心臓の移植を受けたアビゲイルは、予後の経過に問題はない。

コーン医師らによる無拍動流の人工心臓には可動パーツがひとつしかないため、間違いなく多くのメリットがあるだろう。コーン医師は、拍動する人工心臓について、初期の飛行機を設計していた人々が「羽ばたき」が必要だと考えていたのと似ていると述べ、自然を模倣することが常に最良のソリューションというわけではないと指摘している。[無拍動流ポンプは、人工弁などを必要としないので、小型化でき、耐久性が向上する可能性があるとされており、世界の多くの研究チームが開発を進めている]


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“キリンは法律上、ペットとして飼育できる。これは日本国内で個人が飼育できる最大の陸上哺乳類である。”

“キリンは法律上、ペットとして飼育できる。これは日本国内で個人が飼育できる最大の陸上哺乳類である。”

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古びたものをありがたがる風潮

古びたものをありがたがる風潮は一部にある
金ピカの仏像よりも
古びた仏像のほうがありがたい感じはある
教えも古いからだろう

iPS細胞の関係ならば新しいことが信仰の対象になるのだろう

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“「どうやって直すのかわからないものを、こわしつづけるのはもうやめてください」”

“「どうやって直すのかわからないものを、こわしつづけるのはもうやめてください」”

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「売れているのが良いもんなら、世界一うまいラーメンはカップラーメンだ。 」

「売れているのが良いもんなら、世界一うまいラーメンはカップラーメンだ。 」
記憶に残るのは良い本ではない。売れた本である。古典がベストセラーになるのではない。ベストセラーのなかからしか古典は生まれてこないのだ。


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人間の運命というものは、 99.9%が成功しないものだ。 成功者でないほうがより人間的な運命だ。 岡本太郎

人間の運命というものは、
99.9%が成功しないものだ。
成功者でないほうがより人間的な運命だ。
岡本太郎


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運動が必要なのは、それがストレスを減らしてくれて、食欲を減らすことにつながるからです。

運動が必要なのは、それがストレスを減らしてくれて、食欲を減らすことにつながるからです。

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・どうせ一年後には忘れてることだから ・命まで取られるわけじゃない ・この広い宇宙に比べたら・・・ この3つで何でも乗り越えられる

・どうせ一年後には忘れてることだから 
・命まで取られるわけじゃない 
・この広い宇宙に比べたら・・・ 

この3つで何でも乗り越えられる 



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“年を重ねるにつれていろんな世界を知って周りに優しくなる人がいる一方で、どんどん自分の世界を強固なものにして他人に厳しくなる人がいる”

“年を重ねるにつれていろんな世界を知って周りに優しくなる人がいる一方で、どんどん自分の世界を強固なものにして他人に厳しくなる人がいる”

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2013年桜満開

春のうららの隅田川
というほど大きな絵柄ではないのだが
水に浮かぶ桜の花びらを見ると
自分がこの程度のものにもしみじみとしているということを思い
これも老いの兆候かと受け入れている

東京は今日2013年3月29日、桜の満開をやや過ぎたあたりで、
散る花びらが地面をきれいに飾っている
おびただしい花弁の数であるが
満開の桜はどう見ても完全で
どこから溢れて散ったのだろうかと思う
生命の豊かさとはこのようなものなのだろう

今年は東京の桜は異例なほどに開花が早かったので
入学式までは持たないだろう

桜が咲いてから後、寒い日もあり、
これも例年のことなのではあるが、
毎年改めて桜が咲いたのに寒いですねえなどと挨拶をしていて
この変わりのない様子が不思議でもある

今日は少し暖かさを感じる
29日で金曜日、
4月1日は月曜日なので
会社では今日が区切りの日になる

いろいろな人間関係の変わり目の日でもある
去るものは日々に疎しということで
今のあふれる程の強い愛情や
深い感謝の思いも
やがて遠く懐かしく優しい手触りになる

スギ花粉はほぼ終了し
現在はひのきと中国からの黄砂の影響があるらしい

政治状況としてはなんとも前のめりな浮ついた発言が飛び交っているようだ
振り返ってみればあの頃は躁状態であったと確認されるのだろう

遠い将来の目標よりは
一日一日を意義深いものにする努力がますます必要になると感じている
現実の隣人をいかにして愛することができるか
それが問題だと感じている

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なついたほうが得

ひと懐っこさ

なついたほうが得 



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“個人的に好きなエピソードは、中島らも氏か町田康氏かリリー・フランキー氏が体験した話で、定食屋かソバ屋のじーさんがいて、仏のような人格者だった。どんな客が来てもいつも笑顔で礼儀正しい。こんないい人はいないと言うと、じーさんは謙遜する。  で、みんなでご飯注文したら、じーさんの奥さんであるばーさんが食器を運ぶ。で、なぜかばーさんが手違いで箸を落とした。  じーさんは、その場でばーさんを「お客さんになにしてんだ、ババァ、死ね!」みたいな感じで罵り、鉄拳と灰皿か食器で殴って出血。ばーさんは鼻血を出してのたうつ。

“個人的に好きなエピソードは、中島らも氏か町田康氏かリリー・フランキー氏が体験した話で、定食屋かソバ屋のじーさんがいて、仏のような人格者だった。どんな客が来てもいつも笑顔で礼儀正しい。こんないい人はいないと言うと、じーさんは謙遜する。
 で、みんなでご飯注文したら、じーさんの奥さんであるばーさんが食器を運ぶ。で、なぜかばーさんが手違いで箸を落とした。
 じーさんは、その場でばーさんを「お客さんになにしてんだ、ババァ、死ね!」みたいな感じで罵り、鉄拳と灰皿か食器で殴って出血。ばーさんは鼻血を出してのたうつ。ばーさんが箸を落としたのは、じーさんに心底怯えていたからだった。
 その場にいた人が思ったのは「ああ、全方面に良い人でいるのは、人間には不可能で、良い人に見えたとしても、たまたま良い人に見える方角に自分が立っていただけ」だそうな。まさに。
 私が人格者という評判を信用しないのはそゆこと。”


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退屈な授業があるから 自分のしたい事がはっきり分かる

退屈な授業があるから
自分のしたい事がはっきり分かる
先生、ありがとう

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“透明な募金箱には、あらかじめ見せ金を入れておく。 すると、募金の集りがよくなることがわかっている。   路上パフォーマンスでは、サクラを使って盛り上げる。 周囲もノリやすくなるからだ。   書籍を売りたければどうするか? 「一番の売れ行き」とか「伸び率最高」というPOPをつければいい。 書籍が良いものであることを説明する必要はない。 多くの人が買っていることさえ、伝えればいい。   自分で何を買うかを決められる人は、全体の5%だけ。 残りの95%の人は、他人のやり方を真似する人たちです。        

“透明な募金箱には、あらかじめ見せ金を入れておく。
すると、募金の集りがよくなることがわかっている。
 
路上パフォーマンスでは、サクラを使って盛り上げる。
周囲もノリやすくなるからだ。
 
書籍を売りたければどうするか?
「一番の売れ行き」とか「伸び率最高」というPOPをつければいい。
書籍が良いものであることを説明する必要はない。
多くの人が買っていることさえ、伝えればいい。
 
自分で何を買うかを決められる人は、全体の5%だけ。
残りの95%の人は、他人のやり方を真似する人たちです。
                   キャベット・ロバート”


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“もうちょっと全体的にゆるいというか、いい加減なほうがみんな幸せになれるのかも。例えばメールとか手紙を送っても90%くらいしか届かないとか、電車は平気で30分くらい遅れたり突然運休したりするとか、信号とか自動販売機とかちょくちょく故障しているとか、そういうのを『まあしょうがないね』ってみんなで言うようになれば、みんな幸せになれるのかも。” もうちょっといい加減なほうが幸せになれるのかな

“もうちょっと全体的にゆるいというか、いい加減なほうがみんな幸せになれるのかも。例えばメールとか手紙を送っても90%くらいしか届かないとか、電車は平気で30分くらい遅れたり突然運休したりするとか、信号とか自動販売機とかちょくちょく故障しているとか、そういうのを『まあしょうがないね』ってみんなで言うようになれば、みんな幸せになれるのかも。”
もうちょっといい加減なほうが幸せになれるのかな 


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“ 1.昼に眠気がくるのは当たり前のことだと考える 1日に2回眠気のサイクルがあり、一般的に午前2時から午前4時の間に一回、午後の1時から午後の3時の間にもう一回眠気がくるそうです。人によって個人差はありますが、一度きた眠気の後、約10時間後に再度眠気がくるとのこと。以前は食事をとると眠くなると言われていましたが、現在は食事とは関係ないとされているようです。 2.眠る時間によって効果が異なる 20分前後のうたた寝をとると、集中力をアップする効果が得られる。まだ本格的な睡眠に入っていないため、目覚めはスッ

1.昼に眠気がくるのは当たり前のことだと考える
1日に2回眠気のサイクルがあり、一般的に午前2時から午前4時の間に一回、午後の1時から午後の3時の間にもう一回眠気がくるそうです。人によって個人差はありますが、一度きた眠気の後、約10時間後に再度眠気がくるとのこと。以前は食事をとると眠くなると言われていましたが、現在は食事とは関係ないとされているようです。

2.眠る時間によって効果が異なる
20分前後のうたた寝をとると、集中力をアップする効果が得られる。まだ本格的な睡眠に入っていないため、目覚めはスッキリ。90分前後のうたた寝をすると、寝不足によって生じている眠気を解消することができる。ちょうどこの頃にレム睡眠に入るため、寝起きもスッキリしている。

3.うたた寝の時間を45分から90分の間で設定しない
うたた寝を始めて45分~90分の間は深い眠りに入っているため、この時間帯で目覚まし時計などを使って、無理やり起きるのは良くない。この時間帯に起きてしまうと、体がだるくなる。

4.横になれる暗い場所で仮眠をとること
ただし、そのまま熟睡してしまうことがあるので注意は必要。

5.ホワイトノイズがうたた寝をする助けになる
ホワイトノイズとは、さまざまな周波数成分をほぼ均一に含むノイズのこと

6.就寝時間に近い時間帯でうたた寝をしないこと
その後眠れなくなってしまうため、避ける方がよい。

7.仮眠をしないで、無茶な仕事をするのはやめましょう



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Starry night

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“「好きな人には親切に 嫌いな人には丁寧に」”

“「好きな人には親切に 嫌いな人には丁寧に」”

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第32章 いったいパーソナリティ障害患者は変わるのだろうか?

第32章 いったいパーソナリティ障害患者は変わるのだろうか?

ポイント
・精神療法でパーソナリティが変えられると期待しない方がいい。
・ある種の傾向は治療とともに変更が加えられて、行動を変えるに至る。
・どの傾向と行動が不適応なのかをつかむ。
・どの感情がどの行動を引き起こしているのかを観察し、必要なら別のテクニックを使う。
・多くの場合患者は幸せな結末を迎えない。

パーソナリティ障害のある種の特徴(例えば、安定、変化に抵抗、扱いにくい)について言えば、改善をもたらすには、強力な治療が必要である。
—-Handbook of Personality Disorders , ed. Jeffrey Magnavita

我々は何とかして適応的な自我を保持して、様々なストレスに対して伸縮し弾力的に(resilient)対応する。
残念なことにパーソナリティ障害の患者はコントロール多すぎか、コントロール少なすぎかのどちらかであることが多い。どちらの極端も不適応と考えられる。
パーソナリティ障害に対して試みられた新しいタイプの精神療法がいくつかある。認知行動療法(CBT)、弁証法的行動療法(DBT)、対人関係療法(IPT)、問題解決療法(PST)。精神分析や精神力動的精神療法のような伝統的な精神療法も現在もよく用いられている。目標焦点型集団療法もパーソナリティ障害患者に有効な治療の1つである。薬物療法は多くの患者に必要である。
認知行動療法(CBT)は比較的短期間で、焦点を絞った精神療法で、患者がどのように考えているか(認知)、行動するか、コミュニケートするかを考える。精神分析に比較して過去(子供時代)よりも現在に焦点を当てて考える。研究結果では認知行動療法(CBT)はうつ病、不安症、OCD、恐怖症、Ⅰ軸障害に有効である。認知行動療法(CBT)をⅡ軸障害に試みた結果は、長い期間が必要であること、転移を扱う必要があること、過去(子供時代の歴史)を考える必要がある事がわかった。認知行動療法(CBT)の最初の考えは、「気分や行動は認知の産物である」という基本的な仮定である。ある刺激が患者に自動思考(AT)を引き起こす。パーソナリティ障害の場合は不適切な自動思考である。自動思考は肉体的反応、気分変化、機能不全行動を引き起こす。
自動思考は中核信念(CBs)に由来している。Ⅰ軸障害の多くの人は肯定的な中核信念も否定的な中核信念も持っている。しかし多くのⅡ軸患者では主に否定的中核信念だけを持っている。パーソナリティ障害患者の持つ根深い否定的中核信念としては、たとえば「私が悪い。弱くて頼りなくて、醜くて、気味が悪い」。パーソナリティ障害患者は侮辱に対して敏感であり、そのことがまた彼らの中核信念を否定的に強める。
小児期初期の虐待はパーソナリティ障害患者に破ることのできない固い思考パターンを植え付ける。
パーソナリティ障害の人はうつ病のようなⅠ軸障害をに対処するために治療を開始するのだが、中核思考を問題にするとなれば、長期間を要し、治療者は治療者ー患者の相互関係を意識する必要がある。

キーポイント
多くのパーソナリティ障害患者では基本的なコミュニケーション・スキルに欠けている。
医師は患者に教えようとしているテクニックを患者が理解するとは思わないほうがいい。回避性パーソナリティ障害患者は「人々が私を拒絶するだろう」と思っているので、自分から人々を回避する。患者は人々に関する自分の自動思考を検証してみて、自分の回避を解決しなければならない。治療者は回避性パーソナリティ障害患者に、人々に受け入れられている状態についてイメージできるように援助する。 パーソナリティ障害患者が、いつも慣れ親しんだシナリオ以外のシナリオを想像して見ることは非常に難しいことだ。宿題もやってこないので、治療には長期間を要する。境界性では人生初期の家庭環境が危険で不安定だったので、コミュニケーションは特に難しい。彼らは他人を悪人と思い、自分を出来損ないで力がないと思っている。認知行動療法治療者が境界性パーソナリティ障害患者に対応するとき、第一の問題は、患者のアンビバレンツを認容するような治療関係を築くことである。いったんこの治療関係が形成されて、次に症状にとりかかる。その時初めて自動思考が問題にされて、中核思考が明らかにされる。治療は患者が我慢していられるうちは何とか続いて、そのうち患者は治療者を拒絶する。治療者は柔軟で適応的でなければならない。それは境界性パーソナリティ障害患者の性質と反対である。

弁証法的行動療法(DBT)はもともと境界性パーソナリティ障害患者の治療のためにリネハンによって開発された。研究によれば、気分障害や他のパーソナリティ障害に有効である。弁証法的行動療法(DBT)では感情制御の技術を学ぶのだが、まず感情の正体を知り、名前をつける、そして嫌な感情に対しての忍耐を養い、一方では肯定的感情を増やす。患者はマインドフルであることを学び、有効な対人関係を学び、自分の感情を客観的に認識することによって制御することを学ぶ。自傷行為や自殺が最初に考察され、次に治療を妨げるすべての行為が考察される。弁証法的行動療法(DBT)はアサーティブネス・トレーニングのようなところがある。患者は自分に必要な物を他人に依頼することを学ぶ。彼らは治療者や集団と「対話」する。特に有効なのは我慢であり、それが教えられる。生き延びるために、患者は気晴らしをし、自分を落ち着け、そのときの「いま」を改善し、損得をよく比較して考えて行動できるようになる。

対人関係療法(IPT)は時間制限精神療法の一つで、1970年代に単極性うつ病の患者のために開発された。
現在では双極性障害、不安性障害、パーソナリティ障害にも用いられる。精神力動的精神療法が対人関係療法(IPT)の生みの親であるが、過去に遡らず、対人関係スキルの改善に焦点を当てる。
認知行動療法(CBT)と似ているのは、時間制限的で、構造化されている点であるが、認知ではなく感情を扱う点が違う。
また、支持的社会ネットワークが強調される。例えば、自己愛性パーソナリティ障害では、患者が他人をどのように見ているかを知るために、患者の現在の対人関係を見なおすことが求められる。
もし患者が他人は患者をたとえば利己的でけちだと見ていると気づきが得られたら、対人関係療法(IPT)のゴールのいくぶんかを達成している。
問題解決療法(PST)は、認知行動療法の一つで、患者は問題解決の態度と技法を学ぶ。根本の考えは、生活の質を向上させ、精神病理的な部分を減少させることである。
1971年にD’Zurilla と Goldfried によって始められ、Nezu と Perri によって年月をかけて洗練された。
PSTの基礎は社会的問題解決の心理社会的構築は精神病理学と関係しているとするものである。

の療法の理論的背景は、社会的問題解決と呼ばれ、日常生活の中でストレスを感じるさまざまな問題に対して、その問題を取り扱うのに有効な解決策の選択肢を見つけ出し、それらの中から最も有効な手段を見つけ出うとするプロセスと定義されています(D’Zurilla & Goldfried, 1971)。
この社会的問題解決における問題とは、なんらかの障害により、そうありたいと思う状態(What I want)と現在の状態(What is)が不一致であり、効果的な解決策(コーピング)がとれない状態のことです。
そして、効果的な解決策とは、ポジティブな結果(ベネフィット)を最大にし、ネガティブな結果(コスト)を最小にするように、問題に対処する(目標を達成する)ための取り組み(コーピング)のことです。
PSTの5つのステップ
認知行動モデルでは、問題場面において、個々人が持っている認知的スキルや行動的スキルが情緒的反応や心理的適応を引き起こす媒介的役割を果たしているとされています。
D’ Zurilla & Nezu(1982)によれば、効果的な問題解決を行うには、相互的に作用する5つの認知行動的スキルが必要であるとされます。PSTは5つの認知行動的スキルを効率的に学習させることを目的とした認知行動療法の一技法です。
PSTは、図1-1に示したように、ステップ1「問題解決志向性」、ステップ2「問題の明確化と目標設定」、ステップ3「問題解決策の産出」、ステップ4「問題解決策の選択と決定」、ステップ5「問題解決策の実行と評価」の5つのステップから構成されています。
PSTの有効性については、メタアナリシスが行われています。
Cuiper et al. (2008)は、合計53の独立した無作為化比較試験のデータを対象として、軽度(mild)から中程度(moderate)の抑うつの成人に対する7つの主要な心理療法(認知行動療法、非指示的心理療法、行動活性化療法、精神力動的心理療法、PST、対人関係療法、社会的技能訓練)の効果の比較を行っています。
その結果、PSTは対人関係療法よりは効果値が低いが、非指示的心理療法よりは効果値が高く、その他の主要な心理療法とは同等の効果があることが示されています。さらに、ドロップアウト率に関しては、問題解決療法が最も低いことが明らかとなっています。

人々は生活の問題を問題解決指向性と問題解決スタイルとによって解決する必要がある。
問題が難しいと思われても、それを脅威で解決困難と考えてしまうよりはいいだろう。
精神力動的精神療法では意識的や無意識的な感情問題について探索して見ることを励まされる。現在ではもっとも一般的な治療である。時間制限的でもないし構造化されてもいない。この淵源は古典的精神分析にある。パーソナリティ障害の患者はこの治療の柔軟性や適応性の恩恵を受ける。多くの患者は対人関係で反復する不適応なパターンにはまりこんでいる。パーソナリティ障害患者でなれけば、この治療法でさらに顕著な変化を達成するだろう。しかしパーソナリティ障害患者であっても、精神力動的精神療法によりいくらかの進歩はする。
古典的な精神分析は催眠から発達した。治療目標は未解決のトラウマを思い出し、解除反応を起こし、解決することである。パーソナリティ障害患者の問題の根源は多くは過去にあるので、精神分析も治療選択肢の一つになる。
多くの精神科医や精神療法家が100年以上に渡り精神分析によってⅡ軸障害を解決しようと試みてきたが成功していない。
患者に要請される基本的なルールはすべてを話すこと。無制限に。治療者は積極的な自由に漂うような注意をもって聴き入り、しかしほとんど治療者は影響を与えない。カウチがこの治療者の受動性に役立つ。精神分析的技法では衝動的な行動は回避すべきだと強調される。演技性や境界性の衝動的な人に対して適用される。自由連想は精神分析のもう一つの基本的な手法であり、多くのパーソナリティ障害患者の気持ちを軽くする。転移はⅡ軸患者の多くでは強烈で未解決なものにならざるをえない。コフートやカーンバーグは、自己愛性や境界性のような分析不可能な患者の精神分析を試みたことで有名である。

キーポイント
精神分析では、不健康な防衛機制を解除し、患者の自己洞察を促すことにより、性格構造を認識することが常に目標となる。

最近では、パーソナリティを変化させる治療は期待されていない。新しい精神療法は性格傾向を調整しようとする。衝動性や外向性のような性格傾向を調整し、行動を変化させる。

境界性パーソナリティ障害の傾向を減少させることができた患者を私は一人だけ知っているが、4年間精神分析に通っていた。

症例スケッチ

エイドリアンは44歳、秘書の仕事で働いてせっせと貯めたお金を精神分析に使おうと決心した。私は彼女が精神分析を受けることには懐疑的で、集団療法の中での方がうまくやっていけると思ったし、支持的精神療法が向いていると考えた。彼女は私にうつ病の薬物療法を相談していた。私の処方はゾロフト100mg/日で、不眠と憂うつ気分、過食、自殺念慮が改善した。私は数年に渡り彼女と月に一回面接していた。うつ病は寛解に至ったが、彼女は週に2、3回の精神分析を続けていた。私との治療の始めの頃に、彼女はしばしば不機嫌になり敵意を示し、私が彼女を嫌っているのではないかと疑っていた。実際は私は彼女を嫌っていなかったが。
ある日は私がall bad になっていて、精神分析家が all good になっていた。一ヶ月後には、私はgood one になっていて、分析家がbadになっていた(保護的でなく何か策動していると思ったらしい)。彼女はしばしば見捨てられたと感じ、ボーイフレンドやガールフレンドと強烈で不安定な対人関係を続けていた。むちゃ食いをして過食症だった。彼女の怒りは最悪の経験だった。彼女の緊急ではない電話を受けてから
時間内に折り返しの電話をしないと彼女は激怒した。私のクリニックで彼女はしばしば怒りを発散していたものだ。
4年経って、私は彼女が「丸くなってきた」と感じていた。私は精神分析のおかげで変化したのだと考えた。彼女の怒りはかなり改善した。もはや見捨てられる不安を呈していなかった。私とも彼女の友人とも喧嘩しなかった。人々はall good でもなくall bad でもなかった。気分は安定し、彼女は素晴らしい変身をしたように見えた。治療によってこんなにも変わった患者は初めてだった。
パーソナリティ障害患者が大うつ病、双極性障害、精神病、不安性障害に苦しんでいる時には薬物療法が不可欠である。大うつ病にはSSRIを用いる。例えばゾロフト、プロザック、セレクサ、レクサプロ、ルボックス、あるいはイミプラミンのような三環系抗うつ薬。Effexor,Wellbutrin,サインバルタは、ノルエピネフリン系やドパミン系に作動する抗うつ薬である。新規抗うつ薬が常に開発され続けている。 双極性障害患者には気分安定薬が必要となることがしばしばである。テグレトール、Depakote,Topimax(トピナ),などがしばしば抗うつ薬と一緒に使われる。 抗精神病薬はSterazine(トリフロペラジン),Halodol(ハロペリドール)ような古いタイプのものから、エビリファイ、リスパダール、セロクエルなどのような新しいものまである。 抗不安薬としては、各種ベンゾジアゼピン、Klonopin(クロナゼパム),Xanax(アルプラゾラム),Valium(ジアゼパム)が使われる。 パーソナリティ障害患者はしばしばAmbienやロゼレムのような睡眠の薬を使う。 我々精神科医は必要な薬剤を決定する際のベストドクターである。



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第31章 ディメンショナル・モデル

第31章 ディメンショナル・モデル

ポイント
・多くの研究者や臨床家はパーソナリティ障害の診断にはカテゴリー・モデルよりもディメンショナル・モデルが有効だと考えている。
・4つのパーソナリティ傾向は次のものである。
1.神経症傾向/消極的感情/感情不統制
2.外向性/積極的感情
3.非社会性/敵対心
4.抑制的/強迫的/良心的
・現在のDSMIV-TRからディメンショナル分類体系に移行しつつある。
・いくつかのパーソナリティ障害患者では、あるディメンションが高く、別のディメンションが低いことがある。
・ディメンショナルな見方で言えば、パーソナリティ障害の診断は、上にあげた傾向の幾つかが極端になったものであり、かつ、機能障害があるものである。

彼はそれはもう怖がりで、新しい体験のドアを開くなんて出来ません。
-----精神科病棟ナース

パーソナリティ障害を昔流にカテゴリー分類しても、臨床的な経過を予想する助けにはならないし、治療計画を立てる助けにもならない。研究者も臨床家も心配しているのだが、パーソナリティ障害と診断すると、否定的な感じがするし、医師、病院、保険会社から粗末に扱われる。また診断の信頼性、併存症、診断の一貫性のなさ、恣意的な障害境界線、などの問題がある。

キーポイント
多くの人が論じているようにパーソナリティ障害の科学的な基礎は不充分である。問題の良い解決のひとつは多分、さまざまなパーソナリティ傾向をスペクトラムとして捉えることだろう。

積極的感情・消極的感情、外向的・内向的、敵対的・従順、抑制的・衝動的、患者はどちらだろうか。こうして分類してゆくと18種類がディメンショナル・モデルとして提案される。Widigerらによって4つの傾向にまとめられて、これで臨床的には充分に有用なディメンションである。
多くの研究者がいまだに議論して、パーソナリティの違いを表現するためには何種類の要因が必要かという。多くの人が同意しているのは4つのディメンションで、不安ー服従、精神病質傾向、社会的引きこもり、強迫的、これらが、神経病質、不愉快な性質、内向/外向、精神病質、勤勉と同等である。
因子分析では、受動的、依存的、社会病質、強迫的、スキゾイドが抽出されている。
どのような分類体系でも、重症度を因子ごとに点数化する必要がある。

症例スケッチ

キャシーはそれは良くないサインだと知っていた。50歳でいまだに母親と暮らしていた。たくましく陽気な列車車掌で、たくさんの男性同僚に怪力と健康を自慢するのが好きだった。肉体と同じように精神の健康も自信が持てたらいいのにと願っていた。
20歳代に短い結婚期間があったが、キャシーは短期間の自由を経験し、一人で、自由な性交渉を持ち、クラックを使った。事態は悪化し、躁病になり、初めての入院は双極性障害と分類不能のパーソナリティ障害だった。その後は母親と暮らした。
表面的には二人の女性は非常にうまくやっているように見えていたが、キャシーの弟は真実を知っていた。今はもうそんなに訪れないが、当時は彼が訪問するたびに母と姉が喧嘩するところを目撃した。キャシーはいつも早く目を覚まし、勤勉に仕事に行き、夜遅く帰った。母親との関係が悪くない限りはそうしていた。当時は部屋に一人閉じこもり考え事をすることが多かった。社交は最低限だった。
49歳の時にうつ病で二度目の入院をして以降、毎週精神科医と約束して支持的精神療法を続けていた。彼女は気分安定薬Depakote(Divalproex)と抗うつ薬セレクサ(Citalopram)を使い始めた。
毎日仕事に行くのと同じように勤勉に面接を続けていたが、肉体的精神的虐待が明らかになるには長い時間が必要だった。彼女は子供時代から母親によって虐待されていた。彼女はこの事実を誰にも打ち明けなかった。更に悪いことに、精神科医が現在の生活状態について驚きを見せた時に彼女は恥ずかしいと思った。
「お母さんとはどんな風?」と医師は聞いた。
キャシーは椅子で苦痛に身悶えし、違うことを答えたいと言った。しかし彼女は面接では決して嘘はつかないと自分に約束していた。彼女は治りたかったし、真実が最終的には彼女を助けると信じていた。「母とはいつも喧嘩しています」と彼女は認めた。
「ひょっとしたら一人で暮らすか、誰か別の人と暮らしたほうがよくないかな?」
キャシーは涙を流して泣いた。もう何年も自分に同じことを問いかけていた。しかし何かがキャシーを母親のもとに留まらせた。母親は嫌味をいい、顔を平手で打ち、いらいらさせるような仕方で彼女を虐待していた。「家を出られるようにがんばってみます」キャシーは自分と医師に約束した。
精神科医と母親との関係を話しあう中で、キャシーが理解したのは、母親に大きな愛を感じているが、基本的には母親が嫌いだということだった。弟のつきあい方は回避であり、それは弟は父親の早い心臓死の原因が、母親がつまらない喧嘩を仕掛けて、サディスティックに振舞ったことにあると思っているからだった。
治療して2ヶ月して、キャシーは自分が精神科医に否定的な態度を取り始めていることに驚いていた。治療の最初の頃は大好きだったのに。精神科医が彼女に、こうした感情について話すように励ましたが、彼女は話せなかった。その代わりに、面接を欠席するようになり、薬も中断した。仕事には毎日行っていた。ある朝、キャシーはウキウキした気分だったが、それは敵意に急変した。母親が彼女を「怠け馬」だと責め、平手でひっぱたこうとしたからだった。突然キャシーは70歳の母親の顔面にパンチを浴びせ、家から走り去った。のちになって列車で車掌をしているところを警官が見つけ、三度目の入院になった。

ディスカッション

双極Ⅰ型に加えてキャシーは分類不能のパーソナリティ障害を持っていた。この診断はスティグマ(悪い刻印)を減らすように精神科医によって注意深く選ばれたものだ。境界性、受動攻撃性、依存性、自己敗北型、などと診断した場合にはスティグマが大きくなるだろう。これらの診断はみな大いに否定的な意味を持っており、分類不能のパーソナリティ障害ならば、よく知られていないし、たとえば境界性のようには嫌われないだろう。
ディメンショナル分類体系では、キャシーは次のようになる。感情不統制・高い、外向性・低い(躁病のときは別)、敵意・高い、抑制・低い、勤勉・高い。こうした評価はスティグマにはならない。また医師は将来彼女がどのようになるか予測できるし、よりよい治療計画を立てることができる。もちろん、双極Ⅰ型については最適治療しなければならない。



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第30章 パーソナリティ障害と身体医学的疾患

第30章 パーソナリティ障害と身体医学的疾患

・多くの身体医学的疾患で、精神科的疾患があるように見えることがある。特にパーソナリティ障害に見えることは多い。
・甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症のような内分泌疾患がある場合、妄想性、境界性パーソナリティ障害があるように見えることがある。
・多発性硬化症ではパーソナリティ変化が起こり、境界性、自己愛性、回避性、依存性などに似て見えることがある。
・AIDS患者はパーソナリティ障害を持っているように見えることがある。境界性、演技性、依存性、自己愛性パーソナリティ障害など。

身体医学的疾患患者はしばしば自己評価が低下しており、絶望、よるべのなさ、恥、怒り、依存欲求亢進などが見られる。退行したり、否認したり自分を隔離したりする。これらの症状はみなパーソナリティ障害に似て見えることがある。
多くの身体医学的疾患は患者の気分やパーソナリティに影響する。
例えば、患者がハンチントン病の場合、攻撃的になったり妄想的になったりする。ちょうど妄想性パーソナリティ障害のように見えるが、実際にドパミン産生が増加して妄想性パーソナリティ障害(偏執病)を引き起こす。

キーポイント
気分やパーソナリティが急激に変化した場合、適切な身体医学的診察や神経学的評価が重要である。

甲状腺機能亢進症のような内分泌疾患では境界性パーソナリティ障害に似て見えることがある。突然怒り出したり、誰とでも喧嘩したりする。実際には甲状腺ホルモンが増えて不穏になっている。
甲状腺機能低下症では動作がゆっくりになり、イライラして、妄想性パーソナリティ障害のように見えることがある。
多発性硬化症では、脊髄神経の脱髄が起こり、そのことがうつ病、躁病、パーソナリティ変化を引き起こすことがある。
原因は正確には知られていないが、多発性硬化症の人は間違って境界性、自己愛性、回避性、依存性パーソナリティ障害と診断されることがある。
おそらくこの病気では数多くの防衛機制が働いて、患者はパーソナリティ障害に陥っているように見えるのだろう。
AIDSでは境界性、演技性、自己愛性、依存性と誤診しないように注意が必要である。HIVのせいで脳内化学物質は大きく変動していて、その結果として気分変動が生じることがある。多くの他の感染性・炎症性疾患たとえばSLEや結核、伝染性単核症は、精神科的問題を引き起こし、結果として誤診されることがある。
その他には神経学的疾患、アルツハイマー型認知症、偏頭痛、ナルコレプシー、ウィルソン病、などで医師は実際はそうではないのに、患者がパーソナリティ障害だと信じてしまうことがある。
また多くの医療用薬剤や気晴らし用の薬剤を使用した場合に、パーソナリティ障害と誤診される場合がある。

キーポイント
医師は最終診断を下す前に、身体医学的疾患について、常に除外しなければならない。

時には精神科医はパーソナリティ障害を治療することにあまりに積極的で、かつて医科大学で学んだことを忘れているかもしれない。充分な生化学的検査をしない、甲状腺機能検査をしない、血算をしないなど。また心電図も含めて充分な身体医学的診察をしなければならない。

症例スケッチ

デビーは30歳代半ばの医師、自分の問題を女性特有の問題と言われるのが嫌いだった。両親とも化学の教授で一人っ子、独立心旺盛で科学的な考え方をするように育てられた。8歳から13歳までおてんば娘で、野球を楽しみ、裏庭の望遠鏡で星を眺めた。14歳の時月経が始まった。デビーは月経直前に彼女を困らせる抑うつや不安気分をなるべく少なくしようとした。
思春期の間は気分は少なくとも耐えられるものだった。しかし20歳代になって、デビーは月経前にはっきりした肉体的、精神的変化を自覚した。胸は大きくなって痛み、偏頭痛になり、お腹はふくらんでいつもの洋服が着られないことがあった。デビーはの気分は最悪で、大学で実際に叫びだしそうだった。彼女でさえ行動に驚いた。特に困ったのが集中できないことだった。普段はデビーは落ち着いて、論理的だった。しかし月経直前には気分が悪く疲れて、自分をコントロールできなかった。不眠になりチョコレートやジャンクフードを貪り食べた。しかしいったん月経が始まると、いつもの状態に戻った。
デビーはこうした月経前症状のせいで自分を軽蔑していた。彼女が一番嫌いだったのは、女性は月経があるからその期間は自由にできないという固定観念だった。そこで彼女は自分の問題を隠そうとした。月経開始の数日前には婚約者とも友人とも会わないようにした。しかし人々から離れていようとする限り、必然的に誰かと口論になった。デビーは何年間も自分の症状を我慢した。そしてついに結婚式の数週間前、婚約者は婚約を破棄した。
産婦人科医を訪れて涙を流しながら全てを説明した。その医師がデビーにセレクサ(シタロプラム)20mgを投与し、精神科医を紹介してくれた。デビーはもうこれ以上我慢出来ないことを確認した。
デビーが驚いたことに、次の月経は何の問題もなく来て、過ぎた。悲しみ、絶望、不安、怒りを感じることなく、サイクルの20-28日目を快適に過ごせた。いつもなら最悪の期間だった。普通に寝て、食べて、よく集中できた。胸もお腹も膨れなかった。26日目に偏頭痛があったが、アスピリンを2粒使って緩和できた。
精神療法でデビーは自分の女性性を否定しようとしていることを理解した。彼女は男性と全く同じだという信念と月経前不機嫌性障害(Premenstrual dysphoric disorder ,PMDD or PDD)を受け入れる必要はないという信念で生きてきた。
デビーにとって月経前不機嫌性障害を受け入れることは女性が男性に比較して劣等であると認めることに等しかった。
薬剤により月経前不機嫌性障害が軽減されることを経験して、彼女は自分がこれまでどれだけ不快だったかに気づき、自分自身の性に対しての自分が抱いていた無意識の偏見に直面した。

ディスカッション

女性の3-5%が月経前不機嫌性障害の診断基準を満たす。多くは10歳代から20歳代の終わりに始まり、閉経とともに治る。通常はデビーのように30歳代に治療を始める。
月経前不機嫌性障害は月経の黄体期に起こる。つまり、排卵から月経開始までの期間に起こる。研究によればセロトニンのばらつきがあり、したがってセレクサのようなSSRIが有効である。デビーの症状の中で、抑うつ・不安気分、気分易変性、仕事や交友での興味減退、集中困難、無気力、不眠は、すべて月経前不機嫌性障害の典型症状である。
またデビーのケースでは、境界性パーソナリティ障害と誤解され、できたはずの結婚を破棄された。薬剤服用で1ヶ月のうちに問題は解消した。もし彼女が境界性または何か他のパーソナリティ障害を持っていたら、そのように早くは改善しなかっただろう。


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第29章 パーソナリティ障害、PTSD、身体表現性障害

第29章 パーソナリティ障害、PTSD、身体表現性障害

ポイント
・パーソナリティ障害の患者はPTSDを体験しやすい。
・クラスターB患者はPTSDを発現しやすい。しかしクラスターAやCもまたPTSDに苦しむ。
・身体表現性障害は回避性、妄想性(偏執的)、自己敗北的(自滅的)、演技的、強迫的パーソナリティ障害によく見られる。
・どのパーソナリティ障害でも身体表現性障害を起こす。

パーソナリティ障害は本当にトラウマとなる病気である。
—-Handbook of Personality Disorders , ed. Jeffrey Magnavita

心的外傷後ストレス障害(PTSD)は患者が心的外傷を受けた後に発生する。トラウマを受けた時に不安が処理されることはない。それはトラウマが重すぎるからであり、かつ/または、患者の精神状態がよくない結果からでもある。パーソナリティ障害の患者はトラウマの解消処理は特に苦手で、彼らは侵入的なトラウマ体験を何度も繰り返しやすいし、夢に見たり、トラウマ体験を思い出させる小さな手掛かりにも苦しい反応を呈したりしやすい。結果として、回避的になり、トラウマに過敏になることもある。
クラスターB患者の場合、PTSDになりやすい。反社会性パーソナリティ障害では、彼らが法律や規範を破るときに危険な状況に落ちいるので、そのときにはトラウマを受けている。彼らの衝動性や攻撃性は暴力を引き起こすし、また他人の安全を脅かすことになる。境界性では強烈で不安定な対人関係がトラウマを引き起こす。彼らも衝動的であらゆる種類のトラブルに巻き込まれる。自己愛性や演技性は過剰に感情的で、対人関係でトラウマを引き起こしやすい。

キーポイント
クラスターAもCも一般よりもPTSDになりやすい。

妄想性パーソナリティ障害は本質的に過剰覚醒でイライラしていて、PTSDになりやすい。スキゾイドは容易に一人になってしまい、自分を縛り付けてしまう。回避性は容易に他人を回避し行動を回避する。依存性ではPTSDになるとさらにますます世話係にしがみつく。強迫性ではPTSDになるとますます周囲をコントロールして命令するようになる。

症例スケッチ

飛行機はアンジーにとって怖くもなんともなかった、その事故の時までは。33歳、2児の母、パートタイムで仕事に出て、文房具屋で事務員をしていた。ある金曜の夜、アンジーと夫、娘と息子は一流会社の西行きの飛行機に乗って、休暇に義理の母に会いに行こうとしていた。静かな飛行が続いていたが、パイロットが「晴天乱気流です」と告げた。彼は全員にシートベルトを締めるように指示した。アンジーがそのアナウンスを聞いたのはトイレだった。そして数回機体がバウンドするのを感じた。自分の席に戻ろうとしていた時、飛行機は突然数百フィート落下した。彼女が方向感覚を取り戻す前に、天井に頭を打ち付けた。アンジーは数秒間、空中に吊るされていたような感じがした。そして見ると、子供と夫はシートベルトをして安全に座っていた。恐ろしい不安と絶望が彼女を襲った。彼女の人生の一こまずつが明滅した。直後にアンジーは飛行機の床に倒れた。しかし自分で立ち上がり、席についてシートベルトを締めた。心臓は暴力的なまでにバクバクし、極度な不安を感じた。飛行機は中西部で緊急着陸し、乗員は全員病院に収容された。アンジーを診察した医師は、肩を怪我している以外は健康だと判断した。
しかしアンジーは健康どころではなかった。夜になって問題が始まった。いつもは彼女はよく眠れるのだが、入眠が困難になった。やっと眠ると、悪夢を見て、飛行機は墜落して炎上して彼女は死ぬ。叫び声を上げて起きた。夫は彼女を安心させようとしたが、彼女はそれも拒んだ。次の日、食欲がなくなった。飛行機がどんなに怖かったか考え続け、考えることをやめられなかった。息子がおもちゃを落とす、娘が叫び声を上げる、そのたびに恐怖が蘇り、体が震えた。夫は彼女の過敏さをからかった。「いつも体に気をつけているのは理解しているけれど、ちょっと気にし過ぎだよ」と夫は言った。職場で仕事中にウロウロ歩いていたので同僚は驚いた。とうとう、上司は医者に行くように助言した。アンジーはそれを無視した。彼女は「特別」で、自分の好きなようにする特権が与えられているといつも思っていた。
二ヶ月が過ぎても睡眠、食欲、驚愕反応、気分、集中力、これらは元に戻らなかった。友人が推薦してくれた精神科医いたので嫌々ながら彼女は訪れた。精神科医は50台の共感的な女性で、アンジーは好感をもった。通常体験の範囲外の苦痛な出来事を体験した時に、PTSDになることを精神科医が説明した。医師は週一回の精神療法を勧め、ゾロフト100mg/日を処方した。
精神療法の中でアンジーは飛行機が緊急着陸するときに体験した死ぬほどの恐怖を話し、その体験が、子供の頃の、命にかかわるようないくつかの事故を思い出させていたことも分かった。治療開始して6ヶ月してアンジーは落ち着きを取り戻した。睡眠と食欲が戻った。静かな気分でいられたし集中できた。もちろん、彼女は依然として自分が重要人物であることについて誇大な感覚を持っていたし、自分は「特別」で、多くの称賛に値すると思っていた。
夫が提案して再度母親に会いに西部に飛行機で行くことになった。彼女は同意していたのだが、2ヶ月前になって計画を拒否した。

ディスカッション

PTSDは非常によく見られる病気で、生涯有病率は1-14%、男性のほうがトラウマ状況に遭遇する機会は多いが、女性のほうが多くPTSDになる。通常患者は姓名の危険に至るようなトラウマ体験のあと3ヶ月以内に発症する。アンジーの場合は、死後の直後にPTSDを発症している。彼女は強烈な恐怖と絶望を体験したが、これは2つともよくある症状である。彼女の自己愛性パーソナリティ障害のせいでトラウマを処理解消することができなくなってしまった。トラウマを処理解消できていればPTSDを回避できたはずである。
パーソナリティ障害のせいで患者はトラウマを正しく処理解消できず、感情や身体反応を一時的にブロックすることもできなかった。
誇大性があるので自分の能力を過大評価し、その考えにとらわれてしまうので感情を処理することができなくなる。そして感情が未分化なままに遮断されるとPTSDが起こる。
過剰覚醒、不眠、イライラ、集中力低下、驚愕反応、これらはみ典型的なPTSDの症状である。アンジーにとって幸いなことに、問題の所在がすぐに分かり、恐怖症、大うつ病、心身症を回避できた。ゾロフトや他のSSRIはPTSDによく効く。もちろん、治療が短かったため、自己愛性パーソナリティ障害はそのまま残されている。
 
身体表現性障害では、身体症状があり、それは身体疾患を疑わせるが、結局身体病ではないことが分かる。
症状は患者を苦しめ、生活を困難にする。パーソナリティ障害患者は身体表現性障害になりやすく、その中には身体化障害(ヒステリー、すなわちブリケ症候群)、転換性障害(心理的葛藤が身体症状に転換している。感覚面と運動面の2つの神経学的愁訴)、心気症(病気ではないかと心配すること)、身体醜形恐怖(身体部分が不完全であるという妄想)、疼痛障害(局所的痛み)、未分化型症状(説明できない身体的愁訴)などが含まれる。
回避性、妄想性、自己敗北型、演技性、強迫性では身体表現性障害が起こりやすい。ある意味では、身体表現性障害はPTSDと似ていて、体験の処理解消が適切にできていない。
PTSDではトラウマそれ自体のせいでトラウマの処理解消が途中で止まったままになってしまう。一方、身体表現性障害ではトラウマ体験は子供時代の早期または後半期に起こり、多くは身体に症状が出る。身体という舞台で、患者の心理的葛藤が上演される。古典的な話としては父親を絞め殺したいと思った次の日の朝、手が麻痺して動かなくなっていた例がある。これは現代では転換性障害と呼ばれる。最近では患者が心理学を理解しているので、このような劇的な転換症状はまれである。しかしフロイトの時代には普通に見られたものである。

症例スケッチ

バーバラは38歳のパン屋のオーナーで、頬のほくろが痛んで一晩に3時間しか眠れなかった。子供時代からのほくろだが、今本人は悪性のものだと信じていた。皮膚科を訪れたところ、医師は良性だと保証して彼女を安心させた。痛みはすぐに無くなった。
一週間後、便秘の後で下痢になった。バーバラは腸の癌になったと確信した。プライマリーケア医師は診察の結果異常なしと伝えた。医師は大腸内視鏡検査の必要さえないと判断した。再びバーバラはすぐに回復した。
バーバラのパン屋の3人の従業員は陰でニヤニヤ笑っていた。彼らは「バーバラはもう一度ガンで死にそうになるに違いない」と笑った。女主人の健康に関する恐怖を何度も見てきていたので、本気にはできなかった。彼らは彼女がいつも注目の中心になり、すべてを演劇じみたものにすることに飽き飽きしていた。
ある日、バーバラはチョコレート・フロスティングを味見して、「砂糖が多すぎます」とそれを作った従業員に言った。そのすぐ後に嚥下障害が始まり、手足は感覚がなくなった。「これに何を入れたの?」と女性に問いただした。「保存料は使わないように言ったはずです」と言ったところ従業員は「いいえ、保存料は使っていません」と主張した。
彼女は保存料にアレルギーがあり、パン職人が間違ってそれを使ったのだと感じたのだ。再び医師のもとに行き、その年10回目になるが、完全な健康だと言われた。バーバラはこのように次から次へと身体愁訴を繰り返した。

ディスカッション

バーバラの主症状は30歳前に始まり続いていた。慢性であるが、ライフイベントに応じて変動した。本当の気持を言葉で表現する代わりに、不安や葛藤が身体症状に現れた。それは神経支配の原則に反するなど、医学的に充分に説明できない症状である。
彼女はまた演技性パーソナリティ障害を持っていたので、変わりやすく皮相的な感情表現だった。
身体化障害(DSMIV-TR)の診断をするためには、4つの疼痛症状、2つの胃腸症状、1つの性的症状、1つの偽神経学的症状が必要であるが、彼女は容易にそれを満たしている。
身体化障害の有病率は女性で0.2-2%であり、男性では0.2%以下である。患者も医師もこの病気には苦しむ。患者は精神科医に受診しようとしない。彼らは自分に心理的原因があることを認めないからだ。多くの患者は不安が強く抑うつ的である。
医師は支持的で保護的な関係を築く必要がある。構造化された定期的な面談が必要で、短くても助けになる。患者の症状は現実にあると見なされるべきであるが、医師は特殊な治療法はないと強調すべきである。
バーバラのケースでも見られたように、医師を訪れると症状は綺麗に消えるこの病気ではよくあるように、バーバラは子供の頃性的に虐待されていた。


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第28章 パーソナリティ障害と物質乱用

第28章 パーソナリティ障害と物質乱用

ポイント
・どのパーソナリティ障害でも物質乱用が起こる場合がある。
・物質乱用ともっとも関係が多いのは反社会性パーソナリティ障害と自己愛性パーソナリティ障害である。
・薬物乱用とは1年に及ぶ不適応的な物質使用のパターンであり、法律的、社会的問題が起こり、家庭、職場、学校で不全状態になるものである。
・物質依存は耐性、離脱、強迫的使用を含む。
・物質としては、アルコール、アンフェタミン、カフェイン、カンナビス(大麻)、コカイン、ハルシノーゲン(STP)、オピオイド(アヘン)などがある。

朝からビール
朝からビール
先のことは知らないが終わりはだいたい同じさ

-----Jim Morrison, “Roadhouse Blues"の歌詞

物質は気分や行動に影響し、患者が物質の影響下にあるときはシゾフレニーや双極性障害、そのほかいろいろな精神病に見えることがある。
パーソナリティ障害の人はもうそれだけで大変なのに、しばしば物質乱用してさらに問題を抱えることになる。アルコールとニコチンがもっとも代表的な乱用物質である。しかしマリファナとコカインもかなり多い。男性は女性よりも物質乱用になりやすい。物質乱用者は反社会性パーソナリティ障害と診断されやすい。物質乱用または依存の患者のおそらく40から50%は反社会性パーソナリティ障害だろう。患者は衝動的で孤立していて、抑うつ的である。もし反社会性パーソナリティ障害の人が抑制されると、社会規範に従うとか、衝動性や攻撃性を抑えるとか、責任を取ることはさらに難しくなるであろう。彼の性格のすべてが、そもそも、彼をアルコールと「クラック」に向かわせている。

キーポイント
境界性パーソナリティ障害は対人関係が不安定で強烈であり、そのことが患者を困らせる。彼らは感情を調整するためにアルコールや「ダウナー」のような物質を使う。

境界性パーソナリティ障害患者は衝動的にむちゃ食いしたり物質乱用したりする。「空っぽだ」と感じたり見捨てられたと感じたとき、薬剤や酒で満たそうとする。
自己愛的パーソナリティ障害患者は誇大感を維持する必要があるので、物質が役立つ。自分は「特別だ」と思うので、もちろん、普通の人々のように依存するのではない。 
彼らは欲しいもの何にでも特権があると思っている。

妄想性パーソナリティ障害ではいつも緊張して警戒しているのでリラックスするために酒を飲む必要がある。彼らが神経刺激薬やコカインを使ったら、自分が本当のパラノイア(偏執狂)だと思い知るだろう。

スキゾイド、回避性、依存性パーソナリティ障害患者はアヘンを使う傾向がある。アヘンはスキゾイドをさらに内向的にし、回避性をさらに人々から遠ざける。依存性は「麻薬密売人」に依存し、あるいは別の物質依存者に依存するだろう。

自己敗北的パーソナリティ障害患者は常に酒やたばこをやって仕事をさぼる。スキゾタイパルではマリファナや他の物質により自分を失ってしまうこともある。 



キーポイント
パーソナリティ障害患者は物質乱用があるとさらに処遇困難になる。

第一段階は患者を薬剤から引き離すことである。アルコール、アヘン乱用、コカイン中毒に入院は有効である。いったん断薬ができれば治療可能になる。AA(アルコール・アノニマス)やNA(ナルコティックス・アノニマス。薬物依存者の自助組織)のような生涯続くようなプログラムに出席することが必要になることがしばしばである。パーソナリティ障害患者が自分を変えることはどんなに困難であるかを治療者は知っている。彼らが困惑しているところに、物質乱用が加わり、さらにもう一つ、自分では変えられない難物が増えることになる。

症例スケッチ

ワンダ、30歳、営業部長、痩せる秘密の方法を持っていた。毎日数百ドル分のコカインを吸引。
誰にも秘密を知られたくなかったが、震えたり、会議中に頻繁に出て行ったりして、みんなが不審を抱くようになっていた。
自分は特別で特権が与えられていると思っていたので、秘密は露見していても、大目に見てくれるだろうと確信していた。
コカイン嗜癖が6ヶ月続いて、ワンダは週末にボーイフレンドと気晴らしにコカイン吸入を始めた。そしてクラックはやっていないのが誇りだった。コカインを吸っているだけなら自分をコントロールできると思っていた。
結局ワンダは毎日コカインを使ったのですぐになくなり、売ってもらうために恐ろしい隣人のところまで車を走らせなければならなかった。
密売人は彼女が行く雑貨屋の在庫係の少年だった。彼は値段を吊り上げ始めた。ワンダは彼の言いなりに支払うしかなかった。彼は安売りはしなかった。ある夜ワンダが雑貨屋に行った時、彼がいなかった。店の主人は、彼はいつもいないと嘆いた。ワンダはお色気で店の主人を誘惑したが、彼は少年の居所を教えてくれなかった。彼女は偏執的になり店の中のみんなが彼女を注視していると被害妄想を抱いた。彼女は店を出て二度と戻らなかった。長い間探しまわった挙句、コカインの売人を自分の会社のビルで見つけた。しかし彼の売値は在庫係の少年の二倍だった。しかしそれは問題ではなかった。ワンダは言いなりに支払った。給料全部とマンションを抵当に入れて借金もした。
コカインはワンダの全てになった。コカインなしの生活はありえなくなった。コカインは食欲を抑制したので20ポンド軽くなった。最新ファッションを身に着けて魅力的だった。女友達はみんな羨ましがっていることを知っていた。彼女は信じられないような存在で、休みなく12時間働いて、疲れを知らなかった。
睡眠は2、3時間で充分で、落ち着かない時にはコカインを吸うだけでよかった。
ある日、会議で重要な顧客がいるとき、ワンダは集中できなくてイライラしていた。言い訳をして女子トイレに駆け込みコカインを吸った。帰ってきた時、彼女はしきりに書類に屈み込み、鼻血が流れた。みんなが心配して、ティシューを手渡しし、椅子に座って頭を高くして後ろに傾け、鼻血を止めるように言った。次の日、人々が鼻血の原因は何だったか知っているという妄想に駆られ、コカインをやめることに決めた。
非常にだるくて眠くなった。喫茶店ではサラダもコーヒーも頼まず、パンケーキとマカロニとチーズを食べた。でんぷん質の食事を貪るように食べ、そのあとでチョコレートケーキを食べた。頭痛がして集中できなかった。なんとかして3日はコカインをやめたが、売人は彼女にクラックをただで与え、パイプを使わせた。ワンダは抵抗したが、彼に太ってきたと言われて、クラックを使おうと思った。
彼女は彼のパイプを持って女子トイレに行き、数分のうちにハイになった。それから数日、彼女は自分の主義を忘れてクラックを大量に使った。彼女はとうとうプライマリー医師を訪れ、社会復なプログラムに参加することになった。ナルコティック・アノニマス(薬物依存者の自助組織)に参加した後も、コカインをやめるまでに6回、逆戻りした。

ディスカッション

ワンダは自己愛性パーソナリティ障害である。その事が彼女のコカイン中毒を助長した。コカインを吸っていれば、誇大的で、特別で、賞賛されて、特権を許されて、傲慢でいられた。
コカイン中毒者はコカインに大金を投じるので、容易に盗みをしたり、薬物を売ったり、売春をしたりする。純度が高くなると元気が出て、社交的になり、多動で、過敏になり、判断力が損なわれる。耳鼻咽喉科の専門医が診察して、吸入のために鼻中隔に穴が空いていることが分かった。
ワンダは6回逆戻りしてそれは数多いように思うが、珍しいことでもない。自己愛性パーソナリティ障害が回復を妨げた。コカインを使っていると彼女は無限の成功と美を空想することができたし、思い通りの姿に自分を夢見て、傲慢で特権的でいられた。


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第27章 パーソナリティ障害と文化要因について

第27章 パーソナリティ障害と文化要因について

ポイント
・ある種のパーソナリティ障害は文化的変異産物に過ぎないと考えられてきた。
・文化が違えば考え方も違う。適応と不適応も文化の違いでもある。
・反社会性パーソナリティ障害は社会経済状態の低さに関係している。従って、それも単に生存のための防衛戦略なのかもしれない。
・妄想性パーソナリティ障害は少数グループに見られることがあり、移民や難民でも見られる。
・スキゾイドは地方から都会へ移住した人の場合に誤診されている可能性がある。一方、スキゾタイパルはブードゥー教やシャーマニズムを信じる人の場合に誤診されている可能性がある。

フランスの人はクール。
---アメリカの文化的固定観念

文化を越えてパーソナリティ傾向を評価することは非常に難しい。ドイツ文化では強迫性パーソナリティ障害が発生しやすく、ラテン文化ではそれほど厳密ではないと言われる。多くの心理学者や他分野の科学者が、ドイツ、ノルウェイ、フィンランドのような北ヨーロッパにおける厳格で早期のトイレトレーニングは人々の強迫性傾向を引き起こすことを証明しようとしてきた。他方、それほど厳しくなく早くもないトイレトレーニングはイタリア、スペイン、フランスなどの南ヨーロッパに見られ、演技性パーソナリティ障害に関係しているとも言われてきた。これは言い過ぎであって、複雑なことを単純にしてしまっている。
性格傾向としてよく知られ、長年研究されてきたものの代表として、神経症傾向、外向性、精神病質傾向の3つがある。
神経症傾向と外向性に関しては文化を越えて測定可能であるが、精神病質傾向についてはそうではないと考えられている。非西洋文化の中には、他者と自分を区別するパーソナリティという概念が知られていない文化もあり、したがってそこではパーソナリティを研究することもできない。
集団アイデンティティを結束させる以外に国家の固定観念は必ずしも有効なわけではない。「アメリカ人はみんな自由を愛する」といってもそれは軍隊をまとめるには便利だろうが、パーソナリティを記述するには不正確である。自己評価を測定するとき、外向性が高ければ肯定的な自己評価となり、神経症傾向が強ければ、自己評価は低い。これはすべての文化に通じて言える。

反社会性パーソナリティ障害は下層社会経済階級に広汎に分布しているようである。このことは適応的な世界観から理解できる。たとえば、なぜ下層社会経済階級の人たちは法を守った行動や社会規範を尊重すべきなのか?法も社会規範も彼らを排除しているのに?と考えてみよう。
もし13歳の少年が野球のバットを切望し、貧しくて買えないとしたら、盗むことにも意味はあるのかもしれないと考えてみよう。もちろん、現実には逮捕されるかいざこざになるだろう。しかし彼の両親が法律も知らず法律を無視しているなら、盗むことも論理的かもしれない。
つまり法や他人の権利を守っても利益がなく破れば利益があるならば破ることを選択する可能性はあるのだ。そのような利益の計算が成立する社会のサブグループが存在する。

妄想性パーソナリティ障害(偏執病)は、多数派に差別されていると感じる少数派で見られることがある。もしあなたが集団の中で唯一のアフリカ系アメリカ人だとしたら、疑い深くもなるだろうし、他人の忠誠心を疑い、信用しなくなり、恨みを抱きやすくなるだろう。これは最近の移民や難民でも言えることだろう。

人口300人の町から800万人のニューヨークに引っ越してきたら、多分内向的になるだろう。親しいつきあいなんか望まないし、他人に無関心になり、孤立していると感じるだろう。これは「感情的凍結」として知られている。多くの移民は冷たく、敵意があり、無関心であるが、しかし彼らは自分のことを投影しているだけなのかもしれない。彼らをシゾイド・パーソナリティ障害と誤診することがある。

あるいは、ハイチに生まれ、家族がブードゥー教で、それが当たり前だとしたら、その人の信念はスキゾタイパル・パーソナリティ障害と誤診される可能性がある。

一方、境界性パーソナリティ障害は世界中どこにでも見られる。彼らは実存的ジレンマを抱え、不安で、性的葛藤に悩み、いろいろな社会的圧力にさらされている。彼らはそれらに対して、感情の不安定さ、怒り、空虚さで対応している。
文化を越えて、人間のパーソナリティは同じである傾向がある。文化の違いは大きいが、内向性、外向性、または神経症傾向、精神病質傾向などに別れていると考えられる。



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第26章 パーソナリティ障害と性別について

第26章 パーソナリティ障害と性別について

ポイント
・男性に多いものがある。反社会性パーソナリティ障害。
・女性に多いものがある。境界性、演技性、依存性。
・有病率の違いは実際にそうである場合もあり、社会的な理由もある。
・女性は一般により感情的で不安で劇的(クラスターB)であると考えられている。したがって境界性、演技性、依存性は女性に多い。
・男性は社会のルールを破っても容認される面もあり、したがって反社会性が女性より多い。

男の子は泣かないの。
-----1999年の「Boys don’t cry」の主人公(境界性パーソナリティ障害)に通りすがりの女性が語る。

成人男性と少年は女性よりも反社会性パーソナリティ障害と診断されやすい。有病率は男性の3%に対して女性はわずか1%である。刑務所や薬物中毒治療センターではもっと高くなる。基本的に、反社会性パーソナリティ障害では他人の権利を無視して蹂躙している。
少年は少女とは違うように社会化される。両親とも、少女がやったらとても我慢出来ないような攻撃的で軽蔑すべきような行動を少年の場合には容認していたりする。男の子は男の子と昔から言われ、男の子は乱暴なものだし、若者は常に腹をすかせているし、とかく羽目を外したがるものと考えられている。このことは我々の社会では重要な意味がある。もし少年が規則や社会規範を破ったら、多くの親がそれを創造性と見るかもしれないのだ。もし少女が社会の秩序から逸脱したら、両親は恥じて良い行いに引き戻そうとするだろう。少女の行動化は両親には創造的とは思われない。少女は暴力的な喧嘩をしないように教えられるし、責任を持てとか自分と他人の安全に気を配れとか言われる。こうした社会的責任感はすべて、少女の場合の社会病質(sociopathy)の進展を妨げている。
反社会性行動に関係する要因としては頭部外傷と虐待の2つがあげられる。少年は活動的なので遊びや喧嘩で頭部外傷を負いやすい。虐待は肉体的、性的、感情的分野に及ぶ。多くの連続殺人鬼は保護者から虐待を受けた恐怖すべき背景から出現している。おそらく少年のほうが少女よりも虐待を受けやすい。研究によれば肉体的攻撃性は遺伝する。ドパミン、セロトニン、いくつかの酵素などに関係する遺伝子が関与している。多分こうした子供は、特に少年は、これらの遺伝子が反社会性パーソナリティ障害に発展するのだろう。反社会性の子供は通常逆境にさらされている。攻撃性、衝動性、良心欠如は、ある個体においては反社会性パーソナリティ障害の進展と関係している。

キーポイント
女性は男性よりも境界性、演技性、依存性パーソナリティ障害になりやすい。またこのことは我々の社会が少女や女性に何を期待しているかの反映である。

我々の社会では、もし少女が何かに対して強い感情的反応を示したら、少年がそうするときよりも、認められやすい。少年が泣いたり大声で不満を言ったりすると、「いくじなし」と言われるだろう。衝動性は境界性パーソナリティ障害において重要な因子であり、対人関係を不安定にし、悪い自己イメージや向こう見ずな性行為、むちゃ食いなどを引き起こす。境界性人格は常に「見捨てられること」を回避しようとしている。我々の文化では男性が対人関係を失うことを過度に気にかけるのは「男らしくない」ことと見なされ、女性の場合にはむしろふさわしいととと考えられている。男性は通常は自己イメージにあまり縛られない。自傷や自殺の脅しをするくらいなら、男性はむしろ実際に自殺する。子供時代のトラウマや無視は女性の場合に境界性に、男性の場合には反社会性につながる可能性がある。境界性パーソナリティ障害と診断される75%は女性であり、一方、男性は25%にすぎない。
演技性パーソナリティ障害では過剰な感情と他人の注目を集める行動がある。彼らは注目の中心になりたがり、不適切に性的に誘惑的である。肉体で他人を魅惑しようとする。この性格の多くは女性であり、臨床ではこの診断は女性に与えられることが多い。しかし研究の中には、男女で似たような有病率としているものもある。演技性パーソナリティ障害の男性は「持ち物をみせびらかす」または筋肉や洋服を見せびらかすことがある。しかし型どおりに、医師は女性をこの分類に診断することが多い。
依存性パーソナリティ障害もまた女性に多く診断される。しかし文化によっては男性もまた依存的であることが奨励される。この性格は他人にしがみつき、服従し、その人から離れるのを極度に恐れる。我々の社会では、少女が両親と家にいたいと言っても異常とは思われない。しかし少年がそういえば、がっかりされるだろう。

キーポイント
少女が受動的で礼儀正しいならば、人々は彼女に好意的である。少年が同じ事をしたら、両親は彼のことを心配するだろう。

臨床では依存性パーソナリティ障害は女性に多いが、研究では男女同程度の有病率と報告しているものもある。
男性でも女性でも、異性の服を着て、異性のように振る舞ってみれば、その時他人がどのように自分を扱うかを知って驚くだろう。例えば、女性がふざけて少年の格好をしてパーティに行ったとする。それがジョークと知っていた人によれば、彼女は本当に少年のように見えた。ジョークと知らない「本当の」男性からは身体的に手荒く扱われた。他の女性たちにいつものような身体接触をしようとしたとき、彼女らは彼女を避けた。こうした周囲の人の身体反応に彼女は驚いた。彼女が当然と思っていたことが全く当然ではなかった。また彼女の身体言語は意図せずに次のことを明らかにした。彼女は普段はおとなくして、膝の上に手を組んで、脚を組んでいることが多かった。それだと彼女は「男性」として居心地が悪かったので、場所を大きくとって脚を広げて座り、椅子の上に腕を広げてやっと落ち着いた。無意識のうちに我々は男女に特定の行動を期待し、その期待から外れると、何が要求されているのか、よく分かる。映画「泣くな少年」でヒラリー・スワンクHilary Swank はしばらくは少年として振舞っていたが、無意識のうちに他の男性たちは何かがおかしいと気がついた。彼らが彼女は女性だと分かると、彼女を猛烈に攻撃した。このように、我々が診断するパーソナリティ障害は男女に関する我々の固定観念に影響されている。

症例スケッチ

ナタリーはファッションセンスが良くて5フィート10インチ、120ポンド、まるでモデルのように見えた。ヘルスクラブの支配人のアシスタントとして働いたが、充分な給料はもらえなかった。それでは本物のデザイナーブランドは買えなかった。彼女は古着屋で買い物をして、痩せた体と美しい長い赤毛を魅力的に見せる服を見つけていた。
彼女は我慢のきかない性格だった。あるときどうしようもないほど笑っていたかと思うと、次の瞬間には泣いていた。仕事中の暇つぶしとして好きだったのは男性の精力的なヘルスクラブ支配人といちゃつくことだった。そのボスが、クラブへの入会を迷っている男性を説得しようと思った時には、ナタリーに頼んでじゃれてもらった。女性たちは彼女をたいていは嫌ったので、彼女は女性の勧誘には有効ではなかった。彼女をデートに誘った男性は全員即座に断られた。彼女は二度恋をしたことがあるが、25歳になって見を落ち着けるつもりは全くなかった。
ある夜、彼女と他の従業員5人で、仕事の後飲みに行った。ナタリーは机の上に座り、赤いドレスは形もよく、色の具合も彼女の赤毛にぴったりだった。よく笑い、マルティーニ・カクテルを大グラスにいれてちびりちびり飲んでいた。みんなで話をしてボスやメンバーをからかった。女子トイレでナタリーは女性同僚とジョークを続けたかったが、彼女はナタリーから逃れて歩き去った。ナタリーは拒絶されたと感じた。ナタリーが他人を誤解したのはこれが最初ではなかった。親友ではないのに親友だと思うことがしばしばあった。
飲み過ぎたあとで、ナタリーは自分でワンルームマンションに帰り、ピンクのサテンガウンに着替えて長い髪をとかしながら椅子に座った。突然彼女は窓の外にジャンプしろと命令する声を聞いた。狭い部屋のまわりを見てみたが誰もいなかった。すると声は再び自殺しろと命令した。彼女は泣いて両手で耳をふさいだ。もちろん声は自分の頭の中から出ていたので止めることはできなかった。幻聴が過量のアルコールを引き金にして始まったのだ。次の日の朝、酔いは醒めて、気分は良くなった。もう彼女には何も聞こえなかった。

ディスカッション

ナタリーには典型的な演技性パーソナリティ障害の特徴が全部揃っている。注目の忠心にいるか男性といちゃついているかしないと彼女は無視されたと感じた。感情は極端から極端に振れた。演劇的で表現過剰である。女子トイレでのやり取りが示しているように、実際は親密ではないのに親密だと感じる。演技性パーソナリティ障害の人は自分のほんとうの感情に気が付かないのが普通なので、浅薄な感情表出を呈し、それゆえ演技性と呼ばれる。ストレスがかかると、解離(dissociate)したり、現実の正しい把握を失ったりする。特にアルコールを飲んだりドラッグを使った場合はそうなる。ナタリーは飲酒の末に幻聴があった。このように幻聴はアルコールの結果として起こることがあるし、素因のある人の場合はアルコール離脱時に起こることもある。
DSM委員会はDSM5からは演技性パーソナリティ障害を変更するか除外するかしたいと考えている。女性の場合に診断されることが多く、性的固定観念と結びついていると考えられるからだ。ナタリーの位置に男性を置いて想像してみれば、全く別な受け取り方になるのが分かるだろう。



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第25章 クラスターCの治療の手がかり

第25章 クラスターCの治療の手がかり

ポイント
・クラスターCには回避性、依存性、強迫性パーソナリティ障害が含まれる。
・クラスターCの患者は恐怖を感じ、不安である。
・クラスター分けの根拠には限界がある。厳密に検証されたものではない。
・身体病がクラスターCを引き起こすことがあるので除外診断が必要である。

母が死んだら私も一緒にお墓に入ります。
-----依存性パーソナリティ障害患者。母が死んだらどうするかと尋ねられて。

クラスターCの人は対人関係での過剰な恐怖、抑制、不安がある。古典的な研究では幼稚園に行く前の子供をマジックミラー越しに観察する。子供たちは観察されていることを知らない。このような早期の段階であっても、潜在的にクラスターCの子供は孤立して、部屋の隅で遊び、他の子どもと遊ぶことを恐れている。もっと普通の子供は部屋の真中でお互いに他人と関係しながら遊ぶ。こうした抑制的な人格傾向は発達の早期に見られ、その後人生を通じて安定して観察される。不安な気質は回避性または依存性パーソナリティ障害につながる。クラスターCの人は家族メンバーにしがみつき、自分の行動に自信がない。強迫性パーソナリティ障害患者は、おそらく子供の頃から働きもので感情抑制し、完璧癖がある。しかしこれが本当かどうかを確認する研究はまだ実行されていない。
回避性パーソナリティ障害では批評されたり社交場面で拒絶されたりすることに極端な恐怖を抱いている。恥ずかしがりで、物静かで、抑制的な傾向がある。他人に反抗することを恐れている。一方で依存性パーソナリティ障害では、他者からの世話を得たいと過剰なほどに切望している。依存的な人たちもまた不安が強く恐怖があるのだが、彼らは他人に頼ることで不安を解消しようとする。
強迫性パーソナリティ障害では、患者は対人関係コントロールと秩序と完璧に心を占められている。彼らはコントロールを失うことを恐れているので、容易には他人と一緒に仕事をすることができないし、他人に従うこともできない。
脳の構造としては不安と恐怖に関して最もしばしば言及されるのが扁桃体である。この部分で恐怖刺激に反応し、感情が記憶と結合している。
クラスターC患者はすべてを犠牲にして「害を回避する」ことを望む。彼らは他の人が害を及ぼすかどうかを見る。新しい状況と新しい仕事に恐怖を覚える。これらは「害の回避」のパーソナリティ・ディメンジョンを持っていることを示している。これらの患者はずっと安定していたいと望む傾向にある。

キーポイント
パーソナリティ障害をクラスター分類することは、これらを分類するひとつの方法にすぎない。パーソナリティ障害の全般を見渡すには限界がある。

クラスター分類の妥当性については検証されていないし、多くの医師はこの見方に関して懐疑的である。それにも充分な理由がある。研究者はそれぞれの分野で診断分類の妥当性について検証する必要がある。このことはクラスターCではまだ実行されていない。多くの研究はクラスターBに関してのもので、特に境界性パーソナリティ障害についての研究が先行している。

クラスターCの診断にあたって特に重要なのが身体病の除外である。回避性パーソナリティ障害ではアルコールやマリファナを使用する場合があり、それらは他人からのひきこもりの原因になる。依存性パーソナリティ障害ではてんかん、糖尿病、メタボリック・シンドローム、その他の身体病が存在することがあり、それらの身体病のせいで、彼らは人生の最初から他者に過度に依存することになる。これらの患者の多くでは、たとえ可能であったとしても、自立の訓練はされたことがない。
強迫性パーソナリティ障害では、コカイン中毒やトゥレット症候群、その他の身体病があることがあり、過度に良心的になり柔軟性をなくしていることがある。

症例スケッチ

患者は56歳の主婦、結婚して34年になる。彼女は一人暮らしをしたこともないし、家の外で働いたこともない。
4年の間うつ病の消長を繰り返し、夫が彼女を一人にするなら自殺すると家族に話したので、治療が始まった。
夫は58歳の弁護士で結婚期間を通じて妻と二人の息子を支えてきた。彼自身が重症うつ病で入院することになってとうとう離婚を決意した。精神療法を通して、家族全体の唯一の養い手としての自分の立場を悔やんでいることを認識した。退院してすぐ彼は妻に離婚書類を手渡した。

妻は困惑した。1週間後、二人の息子によれば、彼女が家に閉じこもり、食事、洗濯など普段の活動が何もできなくなっていた。彼女が望んだことは眠ることだけ、起きた時は彼女は泣いて運命を嘆いた。彼女が自殺を図ろうとした時、息子たちは警官を呼んだ。警官は彼女を救急施設に運び、そこから精神科のうつ病病棟に入院になった。
前回の入院時に患者はたいていの抗うつ薬を試していて、唯一効果があったのはMAOIのNardilだった。
病院ではEffecxor 300mgが投与され、2週間後に退院となった。
退院後に精神療法が始まった。最初の面接の時、彼女は軽装で小奇麗にして年齢相応に見えた。初回面接の間中泣いていたので何も話せなかった。彼女はもう入院はしたくないと訴えた。彼女の入院生活はそれほどの恐怖だった。夫は日常の細かいことまですべて指示していた。どのパスタがいいとかどのファンドに投資するとか。その後のどの面接でも夫を失うことをヒステリックに泣くことから始めた。夫なしでどのように生きて行ったらよいか分からなかったからだ。夫が役割を変更して以来、彼女は息子たちに責任を引き受けて欲しいと願っていた。
治療方針としては彼女に自分のことを自分で決めるように導こうとしたが彼女は抵抗した。そもそも夫が彼女にとって魅力的だったのは支配的で取り仕切る性格だったからだ。妻には意見を述べる余地はなかった。そして彼女はランチのお店はどこがいいか心配していればよかった。いま一時的に収入が減らされてしまい、贅沢品、マニキュア、デザイナー・ドレス、ヘアー・ドレッサーなしでどうやって生き延びたらいいのか途方に暮れていた。息子たちは離婚協議が終結したら、かなりの財産を得て働く必要はないと保証した。
彼女の一番苦しい時間は朝で、孤独で非常に不快だった。自分のことを自分で決めることがどうしてもできなかった。コンピュータの講座で学ぶことが提案されたが、それは彼女は携帯電話さえ操作できなかったからである。大学では全Aで経営学部を抜群の成績で卒業していた。知能指数は平均より高かったのに自分を高めようとする努力はしなかった。夫と息子と友人に全てを頼っていた。女性の友人が一緒に行ってくれると言ったので、コンピュータのコースを受講することにやっと同意した。
精神療法は彼女に時間の使い方を教え、生活の基本技術を教えることに費やされた。彼女は平日にはセットされた時間に起きて、朝食を取り、講義に出て、ジムに行き、ランチかディナーを誰か友人と食べた。働く必要のない羨ましい生活であったが、彼女は自分がどれだけ幸運か理解していなかった。彼女は依然として自分で何かするのは気が進まなかった。自分の能力に自信がなかったのだ。彼女は夫との離婚問題を片付けないうちに別の関係に飛び込みたいと思った。誰か他の人にすぐに支援してもらい子供のように保護して欲しかった。その事から彼女は自分の過剰な依存性に気がついた。

ディスカッション

治療で、患者は、夫がこれまで果たしていた役割りの部分に精神科医を置こうとした。精神科医に大切な決断をしてもらいたかったし、何をすべきか言って欲しかった。医師はその役割りは引き受けず、代わりに、自分で決める試みに導いた。彼女の自信を構築する必要があった。彼女には自分で責任を取る経験が必要だった。彼女の父は彼女が10歳の時に死んだ。父と彼女は仲が良かったので、それは深刻な喪失体験だった。祖母が父の代わりに彼女と母親に指図するようになった。彼女も母親も赤ん坊のように扱われて、自分一人では何もできなかった。
明らかに患者は依存性パーソナリティ障害であり大うつ病であった。
他人が離れていってしまうのではないかと恐れて怒ることができなかった。幼い頃に父親が死んだ時、父親に見捨てられたと感じたように、人にも見捨てられるのではないかと思うと怒ることが怖かった。
夫が去っていった時、それは悲劇的で、新しい考え方や行動を始めることは困難だった。


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第24章 クラスターBの治療の手がかり

第24章 クラスターBの治療の手がかり

ポイント
・クラスターBには反社会性、境界性、自己愛性、演技性パーソナリティ障害がある。
・患者は劇的であり、感情的で、常軌を逸している。
・患者は別のクラスターに同時に属することもある。
・クラスターBの場合は転移と逆転移について留意することが強力な治療技法となる。

心底好きになれる境界性患者にはお目にかかったことがない。
-----精神科教授

反社会性パーソナリティ障害は子供時代の素行障害から始まる。患者は大人になり環境も変化するのに症状は改善しない。素行障害のある子供の多くは反社会性パーソナリティ障害に発展することはないのだが、その中で反社会性パーソナリティ障害になる人は、法律を尊重せず、人をだまし、衝動的で攻撃的である。良心の呵責のない点がユニークであり、それが反社会性パーソナリティ障害である。最近の研究ではMRIで前頭前野の形成不全が示されている。反社会性パーソナリティ障害は前頭前野の萎縮があり、扁桃体の機能不全がある。しかしそれでも、時間がたてば、これらの患者も衝動行為は少なくなり、逮捕も少なくなり、詐欺行為も少なくなると信じられている。

キーポイント
研究者は子供時代にまでさかのぼって行為の追跡をしているのだが、やはり境界性パーソナリティ障害の始まりは成人期初期である。

境界性パーソナリティ障害と診断された子供は必ず成長してから成人の境界性パーソナリティ障害になるわけではない。多くの精神科医が認めているように、境界性パーソナリティ障害と反社会性パーソナリティ障害は見かけほど違わない。どちらも衝動的で攻撃的で家庭機能不全がある。境界性パーソナリティ障害は自分を家族の攻撃性の犠牲者と見なす傾向があるのに対して、反社会性パーソナリティ障害は自分が攻撃性を持って加害する人であると見なしている。
自己愛性パーソナリティ障害と演技性パーソナリティ障害に関しては発症時期についての充分なデータがない。自己愛性の人は他人を操作するが犯罪の意図はない。演技性の人は境界性パーソナリティ障害と似ているが衝動性は低く、感情の不安定性は低い。
反社会性パーソナリティ障害の人の多くは仕事も社交もうまくいかない。境界性パーソナリティ障害の人はもっとうまくできる。演技性の人と自己愛性の人は多分さらにもっとうまくできる。しかしこのいずれも、劇的で常軌を逸した外見を呈することで知られている。クラスターAやCの患者と違い、クラスターBの患者は改善の余地がある。

症例スケッチ

たった一回の精神科医の予約の前に、27歳の心理学大学院生患者は、7回に渡り、日時の変更を電話した。それは初診の予約で、医師はその週は別の日は都合がつかなかったので、次の月のいくつかの時間を提示した。「だめです」と彼女は言い、自分は急いでいる、月曜日は変えたくない、時間を変えることはできないかという。医師はもう一度、彼女の希望を叶えることはできないと説明し、次の月を提案した。結局二人は最初の日時で再度予約を決めた。
面接当日、彼女は15分早く到着し、イライラして待合室で歩き回っていた。彼女は心理学の学生であったにもかかわらず、早く現れることは約束に遅れることと同様に意味のあることなのだと理解していなかったようであった。彼女が精神科医と向きあって座るまでに、すでに彼女は激怒していた。思春期に始まった慢性うつ病を語り始め、学部学生の頃の話をして深刻になり、沢山泣いた。精神科医はティシューを差し出し、患者は箱ごとつかんで医師の手から奪い取った。
「今度はあなたが何かふさわしいことをする番じゃないの?」と彼女は言った。
「何か気に入らないことでもありますか」と彼は聞いた。
「あなたは私が望んだ予約を駄目だと言った。随分不親切だわ。」彼女は肩までの黒いストレートヘアをポニーテールにしてクリップで留めていた。そしてまっすぐ立ち上がって、音高く鼻をかんだ。
彼女は有名な心臓病専門医の娘で、たいていの医師に対して皇室並みの特別待遇を期待していた。彼女の父は気むずかしく要求の多い人で彼女の母とはほとんど離婚したようなものだった。母は受け身で非常にかわいらしい女性だった。患者と弟は父親から(肉体的ではないが)情緒的な虐待を受けていた。彼女が結論したところでは、彼女は全Aの学生ですばらしいテニス選手、熟達したピアニストであったにもかかわらず、父親のせいで大きな無力感にさいなまれていた。
彼女は初診の時、人生で二度目のうつ病エピソードのさなかだったが、再度抗うつ薬を使うことは希望しなかった(以前はパキシルを使った)。彼女はある男性と長いがまだ決定していない関係の最終局面にいて、性的機能不全を回避したいと思ったのが理由だった。
不眠がちで、明け方のパニック障害で目が覚めた。15ポンド痩せてイライラ、不安、メランコリーを毎日感じた。精神科医はレクサプロ10mgを提案し、処方した。面接の終わりに、最初に予約を決めた時の同意にしたがって精神科医は彼女に支払いを要請した。彼女は父親に請求書を送るように言った。医師は彼女に今後の治療の合意事項を確認し、今回は父親に請求書を送るが、次からはそのたびごとに彼女自身が支払うように求めた。
次の約束は次週だったが、再び何度も医師に電話をした。精神科医は彼女が不満を述べた問題のすべてについて再度説明して安心させようとした。しかしついには父親が電話してきて精神科医に請求を減額するように頼んだ。彼の娘はそれほど「特別」だというのだった。精神科医は「ノー」と答えた。患者は予約を取り直しに電話することもなかったし、二度目の診察に訪れることもなかった。

ディスカッション

この患者は二つのクラスターB障害を持っている。境界性パーソナリティ障害と自己愛性パーソナリティ障害である。
彼女にはまた大うつ病とパニック障害があり、そちらの方が治療しやすかった。このケースでは治療の最初から医師に対して過度に要求がましい態度があった。尊大に、彼女は自分の都合に合わせて診察してほしいと言った。医師に一度も会ったことがないにもかかわらず、彼女は見捨てられることを恐れた。どこまで尊大にしたら見捨てられるか試すような態度だった。もし彼女が医師に対して、予定時間よりも早く会うようにしむけることができたなら、医師が彼女に対して融通を利かせてくれて「特別」扱いをしてくれることが証明されるだろう。他の人にとっては明らかなことだが、このことは不安定で強烈な対人関係を開始したことを意味するだろう。なぜなら、この「特別」扱いしろという、言葉にされていないが、不合理な要求は誰も完全に満たすことができないからである。彼女の願いに従わなかったので医師は即座に彼女の心の中で脱価値化され贔屓してくれないダメな人とみなされた。将来、医師が彼女の願いを聞き入れたら、即座に素晴らしい人と理想化されるだろう。これが境界性で典型的である。
彼女は自分で決めて早く到着して待っていたにもかかわらず、時間通りに始めた医師に腹を立てた。彼女の感情は不安定で自分を無力だと何度も思ったはずだ。なぜ自分を尊重しないのか、自分が早く来たのになぜそれを賞賛しないか。そしてなぜ特別の配慮をしないか。最初は彼女は賞賛を期待して早く来たのではないし、早く来たからといって当然早く始めて欲しいとも思わなかっただろう。しかし待っている間に脳の回路が暴走をはじめる。なぜ私はこんなにも無視されて虐待されて軽んじられるのかと怒りがこみ上げる。自己愛性の人は時にこのような感じる。特に同時に境界性パーソナリティ障害を持っている場合にはそうだ。自己愛性の憤怒である。
医師は自分の扱っているのがどんな患者であるかを非常に素早く理解した。時間、場所、料金について堅い限界設定で臨まなければならないとよく知っていた。医師は最初の予約時間と料金契約を維持しようと努めた。驚くことではないが、患者はこの限界設定を破ろうとした。破ることができないと悟ると父親を登場させ、父親は何も知らずにいざこざに巻き込まれる。
患者はあえて意識的に限界設定を突破しようとするのではないし、あえて意識して医師に困難を突きつけているのでもない。彼女の行動は無意識的に動機づけられたものだ。もし尋ねられたら、彼女は、世界は敵意に満ちていて、私はいつでも見捨てられ、私は尊重される特権が与えられていると語ったことだろう。
彼女はまた投影性同一視を呈していて、それは境界性パーソナリティ障害の人が自分の中の望まない側面を他人に投影し、その上でその人に対して行動化するというような防衛である。
精神科医はこうしたクラスターBの行動化にいらいらして怒りを感じる。医師は常に自分の逆転移感情をモニターすることを忘れないでいるべきだ。逆転移感情は強烈で否定的になることがある(陰性逆転移)。多くの場合、治療者は自分を守り、健全な治療を進めるために、スーパービジョンを用意するか、自分なりの有効なクラスターBの治療法を用意するかしなければならない。


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第23章 クラスターAの治療の手がかり

第23章 クラスターAの治療の手がかり

ポイント
・パーソナリティ障害は理解しやすいようにクラスターA、B、Cと分類されている。
・クラスターAは妄想性、スキゾイド、スキゾタイパル。
・クラスターAは奇妙でエキセントリックである。
・ときには同時にいくつかのクラスターに属することがある。

彼はもう本当に風変わりな人だが狂気ではないよ、全く。
----セラピスト、シゾイド患者について

クラスターA患者の症状の多くは遺伝性のようである。特にスキゾタイパルでは遺伝性がある。スキゾタイパルではシゾフレニー患者の血縁が多く、妄想性やスキゾイドではそれよりも少ない。
クラスターAの患者は症状としてすべての人を疑い、勘ぐり、奇妙なことを空想することが多く、人々は彼らを遠ざけて奇妙な人と考える。この奇妙なタイプの人たちをほぼ精神病に似ているという観点でひとまとめにしてクラスターAとしている。ただし妄想性やスキゾイド、スキゾタイパルでは通常は幻聴、幻視などの幻覚は伴わない。しかし妄想性になることはあり、パラノイド的な確信や魔術的な確信を抱く。パラノイド的妄想は妄想性パーソナリティ障害で見られ、魔術的思考はスキゾタイパルで見られる。
スキゾイドでは感情表現が限定され、人々から引きこもるが、妄想的になることはまれである。
スキゾイドではシゾフレニーの血縁はない。スキゾイドは成功した職歴を持つことがある。通常は他人と関わらず、自己夢想に耽る。彼らは現実は問題がないと認識している。
スキゾタイパルでは認知の障害があり、それはシゾフレニーと似ている。スキゾタイパルでもシゾフレニーでも前頭前野での血量減少が観察される。スキゾタイパルではシゾフレニーと同様に側脳室の拡大がある。
クラスターAの患者は自殺や殺人の可能性が高い。引きこもり、パラノイド性で妄想性の場合には自分や他人を害するチャンスが多くなる。もし患者が高齢になり結婚せず男性の場合にはさらに可能性が高くなる。過去の自殺未遂があるかどうかが今後の自殺の危険のよい指標になる。多くの自殺は予防可能であり、患者の自殺の考えのサインに注意しなければならない。

キーポイント
自傷他害の恐れについていつも質問すること。

妄想性パーソナリティ障害では他人が企んでいるという間違った信念のもとに他人に攻撃的になることがある。怒り、敵意、恨みが常にあるので、殺人に至ることがある。
スキゾイドでは他人と関わらないので、殺人の可能性は低い。
スキゾタイパルではパラノイドとなり攻撃的になることがある。奇妙で魔術的な思考は他者への攻撃的な行為に至ることがある。
通常、攻撃は家族か知人に向けられる。殺人を犯す人の50%以上は事前にアルコールを飲んでいた。必ずしもアルコール症やアルコール過剰と知られていなかったとしても、クラスターA患者では過剰アルコールや過剰薬剤の可能性がある。

症例スケッチ

アンドリューは普通の24歳ではない。多彩な能力がある。卓越したダンサー、ピアノ弾き、歌手、手品。しかし彼は自信に思ったこともないし、人にほめられてもそう思うこともなかった。彼は自分はだめな人間で仲間に比較して劣っていると考えていた。彼は無口で引きこもりがちで、誰もアンドリューの自己評価がこれほど低いとは知らなかった。彼はパフォーマーの笑顔を浮かべているだけだった。彼は母方の祖母に育てられたが厳格な人で、「唇をかみしめて」貴族の血統を維持するために彼を育てた。アンドリューは誰にも言わなかったが、母親はヘロイン中毒で、有名なミュージシャンだった父親とは短い期間の関係だけだった。その代わりに、彼はまじめな中流家庭の物語を発明した。短い期間だが、アンドリューはモダンダンスの劇団の一員になった。そこでは男女問わず彼と関係を持ちたがった。彼の性的嗜好がどういうものだったかはっきりしないのだが、かなり苦しんだ末に、彼はすべての人を拒絶した。もともと孤独癖があったし、内部政治に参加することも拒否したので、結局ダンス劇団から追放された。
あるクリスマスに、アンドリューは内面の空虚さを自覚した。それはだんだん激しくなって彼は食事も睡眠も普通にはできなくなった。気分は抑うつ的だったので、近所のクリニックに行った。3年目の精神科レジデントが抗うつ薬を処方したが、吐きけがして落ち着かなくなり、薬を続けられなかった。薬を中止してクリニックには行かなかった。
アンドリューは自殺も諦めた。彼は自殺してもずっと苦しみ続けても同じだと思った。毎週電話していた祖母には何も言わなかった。ある夕方、彼は普通に家に帰り、青酸カリを飲んだ。彼の死に誰もが非常にショックを受けた。

ディスカッション

アンドリューが自殺した理由は何だろう、そしてどうすれば止められただろう。気分障害は自殺ともっともしばしば関係する診断である。うつ病患者は経過の初期に自殺する。男性、単身、孤独、45歳以上が多い。クラスターAのパーソナリティ障害があると自殺の危険は増大する。クラスターAでは対人関係の欠如や対人関係の困難を招くからである。またクラスターAでは逆境に適応することが難しい。
アンドリューは大うつ病の典型的な症状を呈していた。睡眠障害、食欲不振、抑うつ気分、自己評価の低下。しかし彼のうつ病はクラスターAのスキゾイドパーソナリティ障害によって複雑になっていた。彼は性的関係を含めて他人と親密な関係を望まなかった。おおむねは孤独を好んだ。信頼できる親友はいなかった。祖母さえ彼は信頼していなかった。彼は冷酷でよそよそしかった。もしアンドリューが単にうつ病だけに悩んでいたら、クリニックで3年目のレジデントを回避しないで治療関係を保ち、別の抗うつ薬を飲んでいただろう。もっと経験豊富な医師ならば彼と治療関係を維持し、アンドリューに自殺の考えはあるのか聞いたかもしれない。
アンドリューがメンタルヘルス施設を訪問したのに援助できなかったし自殺を止められなかったのはとても残念なことだ。しかしこれは珍しいことではない。研究によれば自殺した人の約20%は死の一ヶ月以内にメンタルヘルス施設と接触を持っているのである。
レジデントは誤ってアンドリューは自殺のリスクが高くないと考えた。若いこと、身体的には健康であること、過去に自殺企図がないことなどが根拠だった。さらに彼はアルコール依存も薬物依存もなかった。最近は15-24歳の自殺リスクは非常に増大していると報告されている。


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