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人工知能によるうつ病の脳科学データの解析 うつ病患者を3つのグループ(サブタイプ)に分けることに成功

 広島大学は9月19日、人工知能によるうつ病の脳科学データの解析により、抗うつ薬が効かない患者群を予想できることを発見したと発表した。研究成果は、英科学誌「Scientific Reports」のオンライン版に掲載された。
 休職や自殺などの要因となるうつ病は、社会的損失が甚大でその適切な診断と治療が喫緊の課題となっている。うつ病は、脳の機能不全や身体的・心理的ストレスなど多様な原因で生じ、さまざまな症状を呈する。
 現在のうつ病診断は、アメリカ精神医学会によるDSM診断で行われ、抑うつ気分、意欲低下などの臨床症状を担当医が主観的に判断することで行われており、客観的な診断法は確立されていない。また、抗うつ薬治療も試行錯誤で行われており、治療に反応しない患者が3割程度存在することから、適切な治療選択と不要な薬物投与を防ぐためにも、脳科学データに基づく客観的診断法および抗うつ薬治療反応性予測法の開発が求められている。
 研究グループは、広島大学精神科で収集された、うつ病患者と健常者計134名のMRIを用いた脳機能画像解析データや脳由来神経栄養因子(BDNF)などの血中バイオマーカー候補物質と、心理検査や問診結果に基づく臨床評価指標を統合解析することで、人工知能のひとつである機械学習を用いたデータ駆動的な解析により、うつ病のサブタイプを同定した。
 研究グループは、これまでに開発した機械学習の「ベイズ多重共クラスタリング手法」を用いて、うつ病患者の多次元データをパターン解析。その結果、右角回を中心とした脳のデフォルトモードネットワークの安静時脳活動および幼児期のトラウマ経験により、うつ病患者を3つのグループ(サブタイプ)に分けることに成功。このうちの1つのグループが、抗うつ薬SSRIに対する治療効果が低いことが明らかになったという。
 今回の研究結果は、抗うつ薬の投与前にSSRIの治療効果を予測できる可能性を示唆している。脳科学データに基づく新しいうつ病の客観的診断・治療法開発への多大な貢献が期待される、と研究グループは述べている。


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