特定秘密保護法案の文章を日本語として読んで、筆者の考えを推定する
高橋氏
例えば、第5章第12条のところにですね・・・。えーとね。文章は色々あるんですが、テロリズムの定義があります。知ってました?
「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動をいう」
僕、これをたぶん10回くらい読みました。これね、法律用語的にどうなっているのかは関知しないんですが、日本語でいうと、どう考えても、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要」したら、「テロリズム」なんです。ということは石破さんが言ったあれはそうなの! なんで石破さんがあんなこと言ったかというと、法案でテロリズムの定義がこうなっているからなんです。だから僕、これが恐いなと思うんです。法案の中には様々な条項があるんですけど、つまりデモで大きい声を出したらテロなんです。これ。でしょ?「主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要」しているわけだから、テロです。石破さんが言っているのは当たり前で、この法律から考えるとデモはテロになる、というようなことを僕は重要だと思います。法律の本質的な問題はあるんですけれど、こういうのは繰り返し読んでいないとなかなかわからないです。 法案を、僕、ある意味を持った日本語の集合と思って読んでいたんです。とすると、ここにある考え方で一番恐いのはこれ(テロリズムの定義)です。
第1章の総則、第一条、この法律は云々・・・というところに、わが国の安全保障について、「国の存立に関わる外部からの侵略等に対して国家及び国民の安全を保障することをいう」とある。「国の存立に関わる外部からの侵略等に対して」なので、「等」ということは誰が決めるのか。外部からの侵略以外もOKということですね。たとえばテロもその一部なので、これ、普通に日本語を解する通常の知能を持っている人が読むと、デモで大きい声出した人はわが国の安全保障を侵していることになりますよね。こういうようなことですよね。
あと気になったのは第22条。「この法律の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、 国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならず、国民の知る権利の保障 に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない」。隣に第2項があって、「出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする」。「かつ」があったらほとんどないじゃん、という。ですよね?
こういうのを日本語として詳しく読んで、心の中に刻んで、この法律が言おうとしていることの全体は何だろうと考えてみるというのが、ちょっといいかなというのが2点目です。
もちろん、個々の条文も含めてこれがどんなに危険かとか、どう拡大解釈されるかという言い方ももちろん正しいんですが、自分で読んで自分で条文を感じて、この秘密保護法を作った人の意図を400字以内で書け、みたいなことをやるとか。(笑)これ、いいな、入試に、とかと思います。そういうことを、もう少し落ち着いた気持ちで考えてみるというやりかた、考え方も横に置いておくといいかなと思っています。
だから法律ってね、実は行政権力を取り締まるためにある。しかしこれ(特定秘密保護法案)にはそういう意図はない。そもそも間違っている。彼らはそういうことを思ってもいないのでしょうが。さっきの事案でみたように、普通でいう拡大解釈、何がわが国の安保に関わる情報かということが特定できないのも恐いが、そんなのは当たり前でね、恐いのは、これ、10年以下の懲役なんです。これは、解釈の余地がありません。つまり恐いのは罰則の方。もう一つの定義とか条文は何の意味もない。それは歴史を知っている人には常識なはずだと思っています。